入荷した箱に何が付いているかで、人が確かめる項目が決まる
原材料のロット記録は、バーコードの有無ではなく種類で打ち手が変わります。読み取り機を先に買うと、ロット番号が1文字も取れないことがあります。
原材料のロットは、いま何で記録されているのか
記録していない会社は、ほとんどありません。農林水産省が委託した調査では、入荷の記録を保存していない食品製造業は0.1%(813社中1社)でした。
残っているのは紙のほうで、製造の記録を書類で保存しているのは94%、電子データでの保存は31%です。従業員6〜20人では、紙89%に対して電子は15%でした。
もうひとつ目立つのは、記録を持たずに済ませている形です。「入荷の記録に日付は無いが、仕入先に問い合わせれば分かる」と答えた割合は全体で22%、6〜20人では32%でした。
小さい会社ほど、自社では記録せず必要になったら仕入先に聞く形になっています。ふだんは困りませんが、回収が起きた日には電話がつながるまで何も進みません。
記録を始めるかどうかではなく、紙で残っているものをどう電子にするかが論点です。
バーコードを読めばロット番号は記録できるのか
できないことがあります。バーコードの種類によって、入っている情報が違うからです。
| 箱に付いているもの | 読み取って取れる情報 | ロット番号と期限の在り処 |
|---|---|---|
| JAN(レジで読む13桁のコード) | 商品コードだけ | 箱に印字された文字 |
| ITF(段ボール用の14桁のコード) | 商品コードだけ | 箱に印字された文字 |
| GS1-128 | 商品コード・製造日・期限・ロット番号 | バーコードの中 |
| GS1 QRコード | 同上 | バーコードの中 |
ロット番号と期限が載るのは下の2つだけで、GS1 Japan(商品コードの標準を決めている団体)はこの2つを推奨しています。出典は原材料識別のためのバーコードガイドライン(2025年8月・改訂第6版)です。
アプリケーション識別子という仕組みで、データの先頭に2桁の番号を付けて何の情報かを表し、商品コードと日付とロット番号をひとつにつなげます。
JANとITFは商品コードしか持ちません。 読み取り機を買っても、箱にこの2つしか付いていなければロット番号は取れません。「バーコードが付いているか」ではなく「どの種類か」を先に見る理由がここにあります。

では、いまの現場はどうしているのか。文字を目で読んで、手で打っています。GS1 Japan のガイドラインにその記述があります。日付は段ボールの文字を目視で確認し、手入力する必要がある、というものです。
ケース単位への日付情報等のバーコード表示ガイドライン(Ver.1.4)にも、原材料識別のためのバーコードガイドラインにも出てきます。段ボールに日付とロット番号を載せる標準ができたのは2020年9月なので、GS1-128でロットまで読める入荷は、これからの話です。
GS1のガイドラインは、日付入りのバーコードを貼っても従来のITFやJANは表示を続けるよう求めています。1枚の箱に2つ貼ってあるのが普通なので、最初に見つけた1つで判断すると読み違えます。
→ くわしくは「バーコード検品で、誤出荷をほぼゼロに」で解説しています。
入荷ラベルを4つに分ける
自社の入荷がどれに当たるかで、次にやることが変わります。次の図は、箱に付いているものから打ち手を決めるためのものです。
図:箱に付いているもので、人が確かめる項目が決まる
見分けどころは、②のバーコードが内側でもう一度分かれるところです。バーコードの下に印字された文字を見てください。括弧つきの番号が並んでいれば、ロット番号まで入っています。
(01)14912345000016(11)260312(15)261211(10)L26C120A のような並びです。数字が13桁か14桁だけなら、商品コードしかありません。
①から④がそれぞれ何割かを調べた公表統計は、2026年9月の時点で見つかりませんでした。 農林水産省の調査もGS1のガイドラインも、ラベルの種類そのものは数えていません。
全国の平均を探すより、自社の1か月ぶんを仕分けるほうが早く、自社にとっては正確です。
どこまでプログラムに任せられるのか
当方で入荷ラベル25枚を用意し、読み取りを試しました。うち8枚は実際にペンで手書きしたものです。入荷の記録に要るのは「何が・どのロットで・いつまで」の3つなので、その3つがそろった枚数で成績を出しています。
次の表は、プログラムだけで読んだ場合と、読めない部分にAIを足した場合の違いです。
Beforeの8枚は、GS1-128が5枚とGS1 QRコードが3枚です。区切りと桁数が決まっているので、毎回同じ答えが返ります。
JAN・ITFの4枚は、読み取り自体は4枚とも成功しています。それでもロット番号は1枚も取れていません。
「読めた枚数」で数えると12枚が成功に見えますが、記録として使えるのは8枚です。 枚数ではなく項目ごとに見ないと、足りない結果が合格で通ります。
写真を見て①から④のどれかを判定する部分も、プログラムで書けました。当方の試験では21枚すべて正しく分かれています。バーコードの有無と、その中身が括弧つきの並びかどうかで決まるためです。
バーコードがそろってもAIは要ります。バーコードに入るのは商品コードとロット番号と期限までで、入荷先と数量は箱に文字で書いてあるだけです。当方は最初この2つを読ませない作りにしてしまい、記録のボタンが押せない画面になりました。
①納品書と④手書きラベルは、プログラムでは区別できません。どちらもバーコードが無いので、見た目の違いだけが手がかりになります。ここから先はAIの担当です。
手書きのラベルはAIで読めるのか
日本語は読めます。英数字のロット番号は、モデルを上げても読めるようにはなりません。
当方で入荷ラベル8枚を実際にペンで書き、Claudeの3つのモデルに3回ずつ読ませました。正解は書く前に決めてあり、AIには渡していません。項目ごとに、そのまま使えた数(24件中)を並べます。
| 項目 | Haiku 4.5 | Sonnet 5 | Opus 5 |
|---|---|---|---|
| 品名(日本語) | 24 | 24 | 23 |
| 入荷先(日本語) | 24 | 24 | 24 |
| ロット番号(英数字) | 13 | 12 | 9 |
| 賞味期限 | 21 | 21 | 19 |
日本語の項目は3つとも変わりません。差が出たのはロット番号だけで、しかも上位モデルほど数が減っています。費用は72項目ぶんでHaiku 9.2円、Sonnet 17.5円、Opus 55.1円でした。
数字だけ見ると高いモデルが劣って見えますが、外し方が違います。
| ロット番号24件 | 正解 | 読めないと申告 | 黙って違う値を返した |
|---|---|---|---|
| Haiku 4.5 | 13 | 1 | 10 |
| Sonnet 5 | 12 | 9 | 3 |
| Opus 5 | 9 | 14 | 1 |
上位モデルほど、読めない文字を「?」にして人へ回します。下位モデルは決め打ちで答えます。結果として正解の数は減りますが、黙って違う値を返した数も減ります。
現場で事故になるのは後者だけです。ロット番号が静かに O0260B から 00260B に変われば、回収が起きた日に追えません。
選ぶ基準は正解率ではなく、間違え方です。
英数字だけ読めないのは、文脈が無いからです。日本語なら「積雪注意」を「横雪注意」と読めば不自然さで気づけますが、O0260B と 00260B はどちらも同じだけあり得ます。
当方は紛らわしい文字を入れたラベルを2枚混ぜました。英字のオーと数字のゼロが隣り合う O0260B と、英字のアイ・数字のイチ・英字のエルが並ぶ I1261L です。
その2枚が次の画像です。読んでみてください。

上の1枚目は O0260B で、1文字目が英字のオー、2文字目が数字のゼロです。
2枚目は I1261L で、1文字目が英字のアイ、2文字目が数字のイチ、最後が英字のエルです。正解を先に知っていても、書かれた文字だけでは見分けられないはずです。
1枚目をHaikuもSonnetも3回とも 00260B と読み、確信度は「高い」と返しました。どちらも「読めない」とは言いませんでした。 先頭の英字オーを数字ゼロにしています。
この2枚は、書いた本人以外には確定できません。筆者も画像を拡大して見比べましたが、決められませんでした。
紛らわしい文字を含むロット番号は、AIを変えても解決しません。手書きする側の書き方を決めるほうが効きます。
→ くわしくは「AI-OCRは無料枠から|失敗しない始め方」で解説しています。
過去の記事と食い違って見えるが、矛盾ではない
当方は以前、運送業の点呼記録をタブレットで入力する記事で、手書きの日本語文を読ませました。結果はOpusが44件中42件、Haikuが13件です。
設計事務所の図面を中身で探す記事の工事名でも、上位モデルのほうが良い数字でした。今回とは逆に見えます。
同じ原理の裏表です。 日本語文・工事名・レビュー文には、言葉としての意味があります。だから上位モデルの読み解く力が効きます。ロット番号にはそれがありません。
意味を持たない英数字では、読み解く力を上げても答えは決まらないので、上位モデルは決め打ちをやめて「読めない」と申告するほうへ動きます。

つまり「モデルを上げれば精度が上がる」も「上げても変わらない」も、どちらも言いすぎです。読ませるものに文脈があるかどうかで変わります。自社で試すときは、日本語の項目と英数字の項目を分けて測ってください。まとめて測ると、逆の結論が出ます。
読み取った値は誰が直すのか
現物を手に持っている人が、その場で直します。これがいちばん確実です。追加のシステム費用はかかりませんが、確認する時間は必要です。読み取りを入れても、人の手が完全に離れるわけではありません。
当方は確認と修正のための画面を作り、タブレットで実際に記録まで通しました。画面では、記録する項目を3つに分けています。
- 確定
バーコードから取れた値です。プログラムが解いたものなので、編集させません。人に確認させると、見る項目が増えて本当に危ない項目が埋もれます。
確定にするのは、読み取れたバーコードのうちGS1の形式だと確認できたものだけです。読めなかったバーコードや、商品コードしか入っていないものは確定になりません。 - 要確認
AIが読んだ値です。合っていそうに見えますが、保証はありません。編集できる形で出します。 - 要修正
「?」が入っている項目と、日付として成立しない項目です。赤枠で出して、先に直してもらいます。
次の画面は、GS1-128のバーコードが付いた箱を読んだところです。

灰色の4つがバーコードから取れた項目で、編集できません。黄色の3つはAIが箱の文字を読んだもので、人が見て直せます。7つの項目のうち、目を通すべきものが3つに絞られています。箱を手に持っている人なら数秒で終わります。
次は手書きのラベルを読んだ画面です。ロット番号が読み切れなかった場合です。

ロット番号だけが赤くなり、下に「読めない文字(?)が残っています」と出ています。どこを直せばよいかが、探さなくても分かります。 商品コードと製造日は灰色の「任意」で、この紙には印字が無いという意味です。直す必要はありません。
「?」や空欄が残っている間は、記録のボタンを押せないようにしました。ただし押せない理由を必ず画面に出します。理由を出さずにボタンを暗くすると、現場は壊れたと判断して紙に戻ります。
修正の入力は、画面の文字入力欄をそのまま使います。タブレットやスマートフォンのキーボードにはマイクが付いているので、音声入力も追加の仕組みなしで使えます。当方の試験でも、入荷先の名前を声で入れて記録できました。
確信度(AIが返す自信の度合い)を、確認を省く根拠に使わないでください。当方の実測では、誤読したのに「高い」と返した回も、正解なのに「中くらい」と返した回も両方ありました。
日付が成立するかどうかの検査も、AIではなくプログラムに書かせます。当方の試験では、手書きの紙に「2029.03.81」と書かれた1枚がありました。3月81日は存在しません。毎回同じ答えが返るべき判定なので、プログラムの仕事です。
導入の手順(最初の1か月)
入荷した箱を4つに仕分ける
直近1か月に届いた原材料の外装を並べ、①納品書だけ・②バーコード・③GS1 QRコード・④手書きラベルの4つの山に分けます。
山の大きさが自社の傾向です。②が多ければ、バーコードの下の文字に括弧つきの番号が並んでいるかを確かめます。並んでいなければ商品コードだけです。
納品書を保存する形を決める
農林水産省の実践的なマニュアル(製造・加工業編)は、入荷の記録として「いつ・どこから・何を・どれだけ」の4項目を挙げています。この4項目は日常の取引で使う納品書や送り状を保存すれば達成でき、新たなコストはあまり生じないとしています。
媒体は紙でも電子でもかまいません。ここを飛ばして読み取り機の見積もりを取ると、すでに達成できることに費用をかけることになります。
ロット番号まで自社で管理したいなら、入荷時に自社でラベルを作って貼る方法があります。GS1のガイドラインも、受け取った側がラベルを発行する形を示しています。
スマートフォンで読み取りを試す
専用の端末を買う前に、手持ちのスマートフォンで読めるかを確かめます。
GS1-128やGS1 QRコードが付いている箱なら、読み取った時点で商品コードとロット番号と期限がそろいます。入荷先と数量は箱の文字にしか無いので、そこは写真から読ませます。
このとき、箱に近づいて撮ってください。当方は試験で失敗しました。ロット番号まで入ったGS1-128は41文字あり、線が細くなります。
写真に写る幅が900画素を下回ると読めなくなり、併記されている商品コードだけのバーコードが残ります。画面に商品コードだけが出るため、「うちの箱はロットが入っていない種類だ」と誤解します。読めないときは、まず撮り方を変えてください。
集計はプログラムに任せる
読み取ったデータの集計は、AIではなく数式やプログラムに任せてください。数える・合計する・決まった形に直す作業は、毎回同じ結果が返る仕組みの仕事です。
そのプログラムを書く作業はAIが得意です。要件を言葉のまま渡してください。「読み取り履歴のシートから、原材料コードとロット番号ごとに入荷数を合計し、期限が近い順に別のシートへ並べる」といった形です。
関数やスクリプトの案が返ってきます。列の名前は現場ごとに違うので手直しは要ります。
よくある質問
英数字のロット番号は全件確認してください。当方の実測では、手書きのロット番号24件のうち、いちばん安いモデルは10件を黙って違う値で返しました。上位モデルでも1件残っています。日本語の項目も外れます。入荷先は24件すべて正解でしたが、品名は上位モデルが24件中23件でした。日本語だから確認不要、とは言えません。
ステップ1の仕分けに専門知識は要りません。難しいのは、どこまで広げるかの判断と、集計の仕組みをどう作るかの部分です。自社の業務に合わせたツールの選定・導入は、ぜひ、ジッソウLABのゲンバAIへ無料でご相談ください。
- ロット番号と期限が入るのはGS1-128とGS1 QRコードだけで、JANとITFは商品コードしか持たない。読み取り機を買ってもロット番号が取れないことがある。
- ①から④の割合を示す公表統計は無いので、自社で1か月ぶんを仕分けて確かめるしかない。入荷の基本4項目は、農林水産省のマニュアルによれば納品書の保存で達成できる。
- 手書きの英数字は、モデルを上げても読めるようにはならない。上がるのは読めないと申告する正直さのほうで、選ぶ基準は正解率ではなく間違え方になる。
- 読み取った値は、現物を手に持っている人がその場で直す。日付が成立するかの検査はプログラムに書かせ、その下書きをAIに書かせる。
直近1か月に入荷した原材料の外装を並べ、①から④のどれに当たるかを見て仕分ける。
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参考にした資料
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