手書きメモと実物が写った工事写真の仕分けと写真台帳への転記は、写真に写った手書きの文字をAIに読ませ、案件台帳との照合をプログラムに任せれば自動にできる
案件台帳とは、会社がいま抱えている工事の一覧で、会社が受注した時点で分かる情報です。
写真そのものには触れません。手書きの文字は正しい向きなら上位モデル(料金が高く、読む力も高いAIの種類)で11枚中8枚、活字は22枚中22枚が読めました。
手書きの工事名をAIが読み違えても、その写真は案件台帳との照合で正しい現場のフォルダに入り、人が見る行に印つきで載ります。
工事写真の整理は、なぜ事務員の手作業として残っているのか
写真に写した手書きメモの内容を、写真台帳へもう一度書く工程があるからです。
工事写真は、配線を終えた分電盤や据え付けた機器といった被写体の手前に、工事名・工種・撮影箇所・日付を書いたメモを持って撮ります。
メモは現場でチョークやペンで書き、1枚撮るごとに書き換えます。だから撮り終えた写真には、被写体と手書きの文字が並んでいます。
次の写真は、当方の担当者が分電盤に手書きメモを貼って撮ったものです。メモを持つ人がいないときに、盤や壁に立てかけて撮るのと同じ形です。掲載用に盤のラベルはぼかしています(AIに読ませた元の写真はぼかしていません)。

メモに書く項目には決まりがあります。国土交通省の写真管理基準(案)(2025年3月版)は、小黒板(工事名などを書いて被写体と一緒に写し込む小さな黒板)に書く事項として、工事名・工種等・測点(位置)・設計寸法・実測寸法・略図の6つを挙げています。
そのうち必要な事項を書き、文字が読めるように被写体と一緒に写し込む決まりです。当方の実測では、小黒板の代わりにメモ用紙を使いました。
つまり、手書きメモの内容は撮った瞬間から画像の中にしか無く、提出の形にするには誰かが読んで打ち直すしかありません。この打ち直しが転記です。現場ごと・工種ごとにフォルダへ分ける作業と合わせて、事務員の仕事として残っています。
この手書きメモを置き換える仕組みが電子小黒板です。撮る前にスマートフォンやタブレットのアプリへ工事名や工種を打ち込むと、シャッターを切ったときにその文字が活字として写真に焼き込まれ、データとしても残ります。

ただし、国土交通省の基準に沿う工事で使うには、発注者側の承諾が要ります。電子小黒板を使える現場と手書きメモが残る現場が同じ会社の中に混ざるのは、このためです。
手書きメモと電子小黒板の違いを並べると、次のとおりです。
| 文字はどこから来るか | 撮った後に読み取る必要 | |
|---|---|---|
| 手書きメモ | 現場で人がチョークやペンで書き、被写体と一緒に撮る | ある(画像の中にしか無い) |
| 電子小黒板 | 撮る前に人がアプリへ打ち込み、撮影時に活字として写真に焼き込まれる | ない(打った文字がデータとして残る) |
この記事でAIに読ませるのは、上の行の手書きメモです。電子小黒板は文字がデータで残るので、読み取りは要りません。実測で電子小黒板ふうの活字も読ませたのは、手書きと比べるためで、電子小黒板を使う会社に読み取りを勧めるためではありません。
もう1つ、整理を難しくしている決まりがあります。同じ写真管理基準(案)は「写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない」と定めています(例外は電子小黒板の電子的記入だけ)。
これは法律ではなく、国土交通省が自分の発注する工事に適用する基準です。ただ、自治体の工事も多くがこれに準じ、民間工事でも契約や発注者の指定で同じ扱いになります。
写真を切り抜いたり明るくしたりして扱いやすくする道は、最初から閉じています。 整理は写真に触らずにやるしかありません。
AIとプログラムは、それぞれ何を受け持つのか
AIが受け持つのは、写真に写った手書きの文字を読むことだけです。読んだ結果を案件台帳と照合して置き場所を決めるのも、人に確かめてもらうかを決めるのもプログラムです。当方が作った仕組みでの分担は、次のとおりです。
| 任せる先 | 何をするか | 費用 |
|---|---|---|
| AI | 写真に写った手書きメモから工事名・工種・撮影箇所・日付の4項目を、書いてある文字のとおりに読む | 1枚 0.35〜2.5円 |
| プログラム | 読んだ工事名を案件台帳の工事名と照合してどの現場かを決め、現場と工種のフォルダへ写真の写しを置く。メモの日付と撮影日時(EXIF)を突き合わせ、写真台帳を作る | 追加の利用料は0円(作る手間は別) |
| 人 | 機械が「食い違いがある」と印を付けた写真を開いて確かめる。写真台帳の撮影箇所の欄は、印の有無にかかわらず目を通す | 確認の時間 |
印が付くのは、工事名・工種・日付のように照合する相手がある項目の食い違いだけです。撮影箇所には照合する相手が無いので、読み違えても機械は気づけません。
実測でも、安いモデルが「キュービクル」を「キューピクル」と読んだ4回は、仕分け先はどれも正しく、印は1つも付きませんでした。仕分け先の正しさと、転記した文字の正しさは別に確かめます。 撮影箇所の欄は、事務員が写真と並べて目を通します。
AIに判断をさせない理由は2つあります。

1つは、案件台帳との照合や日付の突き合わせは毎回同じ答えが返るべき作業で、プログラムのほうが確実だからです。もう1つは、AIが読めなかったときの振る舞いです。
読めない条件のとき、安いモデルは実在しそうな工事名を作って返しました。読む係と決める係を分けておけば、作り話は案件台帳に無い名前として止まります。
写真には1ピクセルも触れません。仕分けで置くのは元ファイルの写しで、元と同一かをプログラムが確かめてから置きます。
AIへ送る縮小画像は送るためだけに作り、保存しません。回転や明るさの補正も元ファイルにはかけません。写真編集を認めないという決まりに、仕組みの側で従う形です。
AIに読ませるのはメモの4項目だけです。上の分電盤の写真には盤の小さなラベルが何十枚も写っていますが、SonnetとOpusは紙の4行だけを返し、4項目とも正解でした。
当方の実測:手書きメモ11枚と活字22枚を読ませた
当方の担当者がメモ用紙に手書きしてスマートフォンで撮った11枚と、電子小黒板ふうに活字を合成した22枚を、Claudeの3つのモデル(料金と読む力が違うAIの種類)に読ませました。正解は紙に書いてあるとおりに先に決め、AIには渡していません。
先に結論を言うと、手書きは上位モデルなら11枚中8枚(約7割)、活字はどのモデルでも9割以上で4項目がそろいました。 上位モデルの読み取りでは、読み違えた写真も含めて33枚すべてが正しい現場へ仕分けられました。
まず、手作業と比べて何が変わるかを、この写真で数えました。なお、AIは上位モデルを使用した結果です。「人が開いて確かめる写真」は、読み取り結果を案件台帳と撮影日時に照合して、プログラムが確認要とした枚数です(正解表は使っていません)。
手書きの写真が全部「開く」側に入ったのは、試験でメモの日付と違う日に撮ったためです。現場でも前日のメモのまま撮れば同じ印が付くので、「本番なら14枚より減る」とは言えません。
次の表は、正しい向きで読ませたときのモデルごとの精度です。「4項目そろった」は、工事名・工種・撮影箇所・日付が全部合った枚数です。Haikuは同じ写真を3回ずつ読ませて合計しました。
| モデル | 手書き11枚で4項目そろった | 活字22枚で4項目そろった | 1枚あたりの費用 |
|---|---|---|---|
| Claude Haiku 4.5(3回の合計) | 33回中1回 | 66回中62回 | 0.35円 |
| Claude Sonnet 5 | 11枚中5枚 | 22枚中22枚 | 0.98円 |
| Claude Opus 5 | 11枚中8枚 | 22枚中22枚 | 2.44円 |
活字はどのモデルも読めています。Haikuが外した4回は、どれも「キュービクル」を「キューピクル」と読んだ半濁点の誤りで、内容の取り違えはありませんでした。
合成した活字なら、いちばん安いモデルでも66回中62回が4項目そろいます。 ただし1文字の誤りは残り、撮影箇所の欄には印が付かないので、安いモデルでも写真台帳の目視は省けません。
手書きでは差が出ました。Opusは工種と日付を全部読み、撮影箇所を外したのは1枚でした。
4項目がそろわなかった3枚には、工事名の1文字(「大原」を「大慶」)の読み違いも含まれます。Haikuは日付を全部読めましたが、工事名が合ったのは33回中4回だけでした。
3つのモデルを試した費用は、合計で約210円でした。
写真ごとの読み取り結果・仕分けの結果・案件台帳・AIに渡した依頼文の全文は、付録の工事写真の手書きメモ読み取り|実測データにそのまま載せています。

向きが最大の変数だった
最初の写真は、メモ用紙を横に置いて撮ったため、文字が横倒しになっていました。この状態ではどのモデルも手書きをほぼ読めず、Opusでも4項目そろったのは11枚中2枚です。送る写しだけを回して正しい向きにすると、同じ写真で8枚に上がりました。
横倒しのとき、Haikuは「本社庁舎建設工事」「三岳台団地3号棟共用部改修工事」のような、紙のどこにも無い工事名を返しました。
文字だけ見ると本物と区別がつきません。 上位モデルは紙にある語を拾ったうえで崩れる形(「大原倉庫」を「大阪局舎」)で、作り話にはなりませんでした。
スマートフォンは撮った向きを写真の情報(EXIF)に残すので、普通に撮れば正しい向きで届きます。問題になるのは、手で回した紙と、チャットに貼る・圧縮して送るなど向きの情報が落ちる送り方だけです。
書きかけて二重線で消した語や、書いた本人の書き間違いをAIがどう読んだか、正解表を作った当方の読み違いは、付録の実測データにまとめています。
→ くわしくは「AI-OCRは無料枠から|失敗しない始め方」で解説しています。
読み違えても、写真が別の現場へ黙って入らないのはなぜか
案件台帳と完全に一致しないものを、全部「人が見る行」に回すからです。人に見せる理由は、機械が気づける次の4つに絞りました。
- 工事名の表記ずれ
案件台帳と1文字でも違えば、いちばん近い現場に置いたうえで「表記ずれ」の印を付けます。「大慶倉庫照明LED化工事」は大原倉庫の現場に入り、印が付きました。
近さは、読んだ工事名と案件台帳の工事名で文字がどれだけ一致するかを、プログラムが数えて決めます。当方の案件台帳では、別の現場どうしは最大でも2割弱、「大慶倉庫照明LED化工事」と「大原倉庫 照明LED化工事」は9割以上でした。この間に境を置くので、読み違えは正しい現場に寄り、別の現場には寄りません。境は決め打ちにせず、案件台帳の名前どうしを測って決めます。 - 案件台帳に無い工事名
どの現場にも近くなければ、要確認のフォルダへ置きます。Haikuが作った架空の工事名は全部ここに落ちました。 - 案件台帳に無い工種
その現場の工種一覧に無い語(「仮設」)は、現場は決めた上で要確認にします。 - 日付の食い違い
メモの日付と写真の撮影日時(EXIF)が合わなければ印を付けます。前日のメモのまま撮った写真を想定した2枚は、両方拾えました。
この4つで、当方の33枚は3モデルのどの読み取り結果でも、先に「人が見るべき」と決めた写真の取りこぼしが0でした。正しい向きで読んだOpusの結果では、33枚中33枚が正しい現場と工種のフォルダに入り、写真が1枚も無いはずの現場に入った写真は0でした。
ただし、この4つが見ているのは仕分け先だけです。Opusが正しい向きで読み違えた3項目のうち、工事名の2項目には表記ずれの印が付きましたが、撮影箇所の1項目には付いていません。
意味の食い違いにも、機械は気づけません。当方の紙には「新設 Tr-2」の工種が「撤去」になった1枚がありましたが、撤去はその現場の工種一覧にあるので印は付きません。
新設した機器を撤去するのはおかしい、という矛盾は、人が写真を開いて気づくものです。
確信度(AIが返す自信の度合い)は確認を省く根拠になりません。Opusの手書きは「高い」と返した4枚のうち1枚が外れ、「中くらい」の7枚のうち5枚が合っていました。
導入の手順(最初の1現場)
直近1現場の写真を並べ、手書きメモか電子小黒板かを数える
手書きメモと電子小黒板の枚数を数えます。電子小黒板だけなら、アプリに残っている文字データを写真台帳に使えるかを先に確かめます。使えるなら読み取りは要りません。手書きが混ざるときだけ、読み取りを試します。
案件台帳を1枚作る
現場ID・工事名・工種の一覧を、表計算ソフトの1枚に書きます。会社がいま抱えている工事の一覧なので、写真を撮る前から作れます(写真ごとの正解ではありません)。照合の相手はこの台帳なので、ここに無い現場の写真は全部要確認へ落ちます。
メモに書く工事名の表記を案件台帳とそろえておくと、表記ずれの印が減ります。
20〜30枚で読み取りを試す
先に断っておくと、この記事の仕組みは当方が作ったプログラムで、配布はしていません。試すには、写真を読み取るプログラムと、案件台帳に照合して仕分けるプログラムが要ります。
用意するのは、社内でパソコンに強い人か外部です。ステップ5のようにAIに下書きを書かせれば、一から書く必要はありません。結果を確かめるのは、いま写真台帳を作っている事務員です。
写真は、スマートフォンで撮った元ファイルのまま渡します。チャットに貼ったり圧縮して送ったりした写真は使いません。当方の実測では、チャットに貼った写真は縮小され、照合に要る撮影日時が消えていました。
人が見る行の理由を画面に出す
要確認に置くだけでは、なぜ見るのかが分からず、現場は元の手作業に戻ります。表記ずれ・案件台帳に無い工事名・案件台帳に無い工種・日付の食い違いの4つを、写真の隣に文字で出します。
作る写真台帳の形を、いまの写真台帳に合わせる
現場ごとに写真・工種・撮影箇所・日付・撮影日時・確認の理由を並べた表を、プログラムに作らせます。そのプログラムを書く作業は、AIに任せられます。
「案件台帳のシートを読み、読み取り結果の工事名を照合して現場IDを付け、現場ごとに写真台帳のシートへ並べる」のように、要件を言葉のまま渡すと下書きが返ります。列の名前は会社ごとに違うので、手直しは要ります。
→ くわしくは「DXが進まない原因は予算と人|小規模企業の越え方」で解説しています。
よくある質問
写真そのものに触れない作りなら、写真編集を認めないという決まりとは別の話です。基準が認めていないのは写真の編集で、この仕組みが作るのは写しの置き場所と写真台帳だけだからです。
ただし、写真を社外のAIへ送ってよいかは、発注者との契約や工事ごとの取り決めを確かめてください。当方は工事ごとの可否までは言い切れません。
正しい向きで撮れていれば、上位モデルで11枚中8枚が4項目そろい、工種と日付は11枚中11枚でした。外れた3枚も案件台帳との照合で正しい現場に入り、印が付いています。斜めから撮った写真や逆光の写真は、当方はまだ測っていません。
電子小黒板を使える工事では、打ち込んだ内容が文字データとして残るので、読み取りは要りません。この仕組みが効くのは、手書きメモが残っている現場と、電子小黒板のデータが写真台帳や社内のフォルダ分けまでつながっていない会社です。
- 工事写真の整理が手作業で残るのは、手書きメモの内容が画像の中にしか無く、写真の編集も認められていないから。整理は写真に触らずに行う。
- 活字(電子小黒板と同じ形)は上位モデルで22枚中22枚、安いモデルでも66回中62回が読める。手書きは正しい向きなら上位モデルで11枚中8枚が4項目そろい、工種と日付は11枚中11枚。
- 工事名・工種・日付の読み違えは、案件台帳との照合と日付の突き合わせで人が見る行に回す。当方の33枚では取りこぼしが0で、別の現場に黙って入った写真も0。撮影箇所には照合相手が無いので、写真台帳の欄を人が目で確かめる。
- 写真の向きが最大の変数で、横倒しでは安いモデルが実在しそうな工事名を作る。向きを保つのはアプリと送り方の仕事。
直近1現場の写真を並べ、手書きメモか電子小黒板かを数える。
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