派遣の勤怠表PDFをOCRで読み単価表と照合する手順

派遣の勤怠表PDFをOCRで読み単価表と照合する手順 AI活用の記事
結論

読み取りはOCR、照合と計算はプログラムに分ける

勤怠表の読み取りはOCR(画像の中の文字をデータに変えるしくみ)に任せ、単価表との照合・集計・請求金額の判定は後段のプログラムに任せます。この役割分担にすると、月次請求の作業は大きく減らせます。

派遣業の勤怠表は取引先ごとに様式が違い、1つのPDFに複数案件が混ざることもあります。読み取りソフト1本で全部を片づけようとすると、そこで止まります。

費用感
読み取り枚数と派遣先の数、連携先のシステムで決まる。1社・1か月ぶんの試験なら手持ちの表計算で試せる
最初の一歩
先月届いた勤怠表を1社ぶんだけ集め、単価表と突き合わせる条件を文章で書き出す

なぜ月末の勤怠処理は「読み取り」だけでは終わらないのか

月末に勤怠表が届いてから請求書を出すまで、事務担当者は同じ作業を派遣先の数だけ繰り返します。PDFを開き、氏名と勤務時間を見て、自社の単価表を別の画面で開く。掛け算して請求書の行に入れる。派遣先の数だけ、この手順を繰り返すことになります。

ここで「読み取りソフトを入れれば終わる」と考えると、多くの現場は途中で止まります。読み取りは文字を起こすところまでしかやらないからです。

勤怠表が届いてから請求書が出るまでを1本の流れにすると、次の図のようになります。TISIのコラムにある工程の図を、派遣会社の勤怠処理に置き換えて当方が大づかみに描き直したものです。

勤怠表が届いてから請求書が出るまでの4つの段階。勤怠表を整える、文字を起こす、集計して単価表と照合、人が確認して請求書。読み取りソフトが担うのは文字を起こす1つだけ

読み取りソフトが担うのは、4つのうち「文字を起こす」の1つだけです。前後の3つを設計しないと、確かめる時間はそのまま残ります。

TISIのコラムでは、次のような要件はAI-OCR(手書きや崩れた文字も読み取れるようにした読み取りソフト)単体では対応しきれないとされています。

取引先ごとの帳票フォーマットの混在・明細行数によるページ数変動・1つのPDF内での複数案件混在・複数ページ金額の合算・予定データとの厳密な突合などの要件はAI-OCR単体では対応しきれない

出典: TISI「RPA/UiPathコラム」 https://www.tisi.jp/service_solution/rpa_uipath/column/column_015

派遣会社の月末に当てはめると、この5つはそのまま日常の風景です。

  1. 様式の混在 … A社は表計算の印刷、B社は自社システムの出力、C社は手書きのFAX
  2. ページ数が毎月変わる … 稼働人数が増えれば明細行が増え、ページが2枚に割れる
  3. 1つのPDFに複数案件 … 同じ派遣先でも部署別・現場別に単価が違う
  4. 複数ページの合算 … 1人の月間実働時間が、2枚にまたがって書かれている
  5. 予定データとの照合 … 契約した単価表・稼働予定と、実際の勤怠が合っているかの確認

この5つのうち1つでも残っていると、読み取りだけを導入しても月末の作業は終わりません。減るのは文字を打ち込む時間に限られ、確かめる時間は残ります。

工程を3つの担当に分けると、どこを機械に任せられるか

月次請求を1本の作業と考えず、担当ごとに割ると、どこを機械に渡せるかがはっきりします。同じTISIの記事では、請求書発行業務について、システムから出したPDFやExcelを起点にAI-OCRで読み取る構成が紹介されています。

請求予定データとの照合や集計・判定を経て、最後に人が確認する形です。AI-OCRは読み取りに集中させ、照合や判定は後段に委ねる役割分担が有効とされています。

読み取りに任せるのは、届いたPDFやFAX画像から氏名・日付・出勤・退勤・休憩・実働時間を取り出し、CSV(表計算で開ける、カンマ区切りの文字データ)にするところまでです。

紙やFAXで届く勤怠表をOCRでCSV化し、自社の基幹システムやExcelへ渡すことで、人による打ち込みを省けるとされています(SmartOCR)。勤怠表に特化した提供では、読み取り結果を基幹システムや勤怠管理システムへ自動で渡せ、取引先ごとの様式に合わせた読み取り精度の調整もできるとされています(ヒノデラボ)。

単価表との照合、時間×単価の計算、契約時間を超えた分の割増、消費税の計算は、関数やスクリプトなどのプログラムで組みます。合計や掛け算は毎回同じ答えが返る必要があり、請求書として使う以上そこが揺れては困るためです。

ではAIの出番はどこかというと、この計算をするプログラムそのものを書かせるところです。読者が関数を覚える必要はなく、出来上がるのはプログラムなので毎回同じ結果になります。

工程を3つの担当に分けると、どこを機械に任せられるか

最後は人の確認です。ただし全行を見るのではなく、次のような差が出た行だけを一覧に出します。

  • 単価表と一致しなかった行
  • 実働時間が契約の上限を超えた行
  • 実働欄が、出勤・退勤・休憩からの計算と合わない行
  • 合計欄が、行の合計と合わない行
  • 読み取りの確からしさが低い行

全件を目で追う確認から、差が出た行だけを見る確認に変えると、確認そのものが速くなります。

工程ごとの担当を整理すると、次のようになります。

工程 任せる先 やること
読み取り AI-OCR PDF・FAX画像から氏名と時間をCSVにする
照合・計算 プログラム(関数・スクリプト) 単価表と照合し、時間×単価で金額を出す
例外の抽出 プログラム 一致しない行・上限超えの行を一覧にする
最終判断 抽出された行だけを見て、請求を確定する

読み取りという、人がやると時間を食う工程をAIに渡し、正確さが要る計算はプログラムに渡す、という分け方です。

自社に当てはめるときは、いま担当者が何にいちばん時間を使っているかを見てください。打ち込みに時間が偏っているなら1行目から、確認に時間が偏っているなら3行目から手を付けるのが近道です。

専用のOCR製品がなくても、汎用AIで勤怠表を読めるのか

読めます。ただし、読んだ結果をそのまま信じない仕組みが要ります。専用の読み取り製品は様式ごとに読み取り位置を設定する作りですが、文章も画像も読める対話型のAI(以下、汎用AI)に勤怠表を渡し、表に書き写させる方法もあります。

当方で仮データを作って試しました。派遣先2社・各2名・1週間ぶんの勤怠表で、合わせて20行です。

片方はExcelで作った出勤簿のPDF、もう片方は手書きの勤務報告書をFAX画質にしたものです。読み取り位置の設定はせず、「氏名・日付・出勤・退勤・休憩を表にして」と頼んだだけです。

仮データで試した勤怠表の読み取りと照合の流れ。様式の違う勤怠表2枚を汎用AIが1つの表に写し、検算と照合はプログラムが行い、人が見る行を5件に絞った

日別の20行は1つも間違えませんでした。一方でFAXの合計欄は2か所を読み違えました。手書きの「4」がFAXの画質で「1」に見え、41時間30分を11時間30分と写していたのです(図の赤枠)。

読み取ったあとの検算はプログラムに任せてあったので、「行を足すと41:30なのに合計欄は11:30」という差が自動で出ました。

検算と単価表との照合を通したあと、人が見る行は20行のうち5行になりました。

確認する行
Before(人が全行を見る)

20行すべて
After(差が出た行だけ見る)

5行
当方の仮データ実演(2026年9月・2社×2名×1週間)

5行の中身は、単価表に無い新人、氏名の表記ゆれ(原本は「髙橋」、単価表は「高橋」)、実働欄の誤記(記載8:30・計算8:00)、そして汎用AIが読み違えた合計欄2件です。

要点は2つあります。今回の2つの様式は、位置の設定なしで同じ表に写せたこと。そして汎用AIは読めなかった文字を「それらしい数字」で埋め、どれが怪しいかを自分では教えてくれないことです。

だから読み取りの後ろに、退勤−出勤−休憩=実働、行の合計=合計欄、という決まった検算を必ず置きます。

ここはプログラムの仕事で、AIにはその検算のプログラムを書かせます。人が5行を確かめるときは、一覧と原本の該当箇所を並べて見られる画面があると速く済みます。

この一連の手順(読ませ方、検算、照合、報告の形)は、AIに手順書として登録しておけます(スキルと呼ばれる仕組みです)。

当方はこの実演の手順を登録し、別の会話で「読み取って照合して」と頼むだけで、同じ手順と同じ結果を再現できました。毎月の定型作業にするなら、この登録まで済ませておくと、頼む人や担当者が変わっても手順がぶれにくくなります。

この結果は当方が作った仮データでの実演です。本物の手書きFAXは字も画質もばらつくので、読み取りの誤りはこれより増えると考えてください。

増えても検算で捕まえる形にしておけば、人が見る行が増えるだけで、誤った金額が請求書に流れる危険を減らせます。最後に確定するのは人です。

氏名と勤務時間は個人情報なので、社外のAIに渡す前に、契約上渡してよいか、社員番号に置き換えられないかを確かめてください。

様式が違う勤怠表やFAXは、どう扱えばよいか

派遣会社の自動化でいちばん多い足止めが、様式のばらつきです。取引先に「様式を統一してください」と言えれば早いのですが、現実には言えません。ここは読み取り側で吸収します。

勤怠管理向けのOCRでは、FAX受信画像の認識ができ、帳票のレイアウト変更や項目の追加にもExcelなどで対応できるとされています(メディアドライブ)。取引先ごとの様式に合わせて読み取りの精度を調整する作りも提供されています(ヒノデラボ)。

自社側にも1つあります。当方の実務で見てきた限り、Excelでの管理は手軽な反面、担当者ごと・取引先ごとにばらばらな表になりがちです。

読み取ったデータの受け皿が人ごとにばらばらだと、せっかく読み取っても照合の相手が定まりません。照合の自動化に手を付けるタイミングで、単価表と稼働情報を1つにまとめ直してください。

様式が違う勤怠表やFAXは、どう扱えばよいか

FAXで届く勤怠表は、いったん紙に印刷してからスキャンし直さないでください。当方の経験では、多くの現場がこの往復をしています。前職の当方もそうで、複合機に印刷せずPDFで保存する機能があることを知らなかっただけでした。

印刷とスキャンは画像を作り直す工程が2回増え、FAXはもともと解像度が低いため、濁点や小さな数字が消えやすくなります。

この打ち手は派遣先の協力が要らず、自社の設定だけで今日から試せます。複合機に「FAX受信をPDFで保存」の設定があるかを、情報システム担当か複合機の販売店に確認してください。

様式のばらつきは取引先側(読み取りで吸収)と自社側(受け皿を1つにする)の2か所にあり、後者は自社の判断だけで直せます。

費用は何で決まるか

出典に具体的な料金の記載がないため、金額は示しません。代わりに、見積もりが動く4つの要素を挙げます。

  1. 読み取る枚数 … 月に何枚のPDF・FAXを読むか
  2. 派遣先の数(様式の数) … 様式ごとに読み取り位置の設定が要る
  3. 連携先のシステム … CSVを取り込むだけで済むか、システム同士をつなぐ必要があるか
  4. 後段の自動化をどこまでやるか … 照合と計算だけを表計算の関数で組むのか、請求書の発行まで自動でつなぐのか

このうち2番と4番が、費用の幅をいちばん大きくします。逆に言えば、1社・1か月ぶんに絞れば、専用の製品を買う前に手持ちの表計算で試せます。料金体系は各社の公式サイトで変わるため、比較する際は2026年9月時点の最新情報を確認してください。

→ くわしくは「AI導入費用は月1万円から|3タイプ別の内訳」で解説しています。

最初の1か月で何をするか

段階を踏まずに広げると失敗します。AI-OCRの導入では、請求書処理をOCRとRPAで自動化して処理時間を70%削減した事例があります。

一方で、一度に多くの業務を自動化しようとして失敗した事例もあり、段階的な導入と従業員への教育の重要性が指摘されています(ハンモック)。派遣会社の場合、最初の1か月でやることは次の4つです。

先月分の勤怠表を1社ぶんだけ集める

選ぶ基準は稼働人数の多さではなく、様式が安定していて、毎月同じ形で届くことです。手書きのFAXが混ざる派遣先は2社目以降に回します。

照合の条件を文章で書き出す

担当者が頭の中でやっている判断を、そのまま日本語で書き出します。

氏名と現場名の2つで単価表の行を特定する、実働時間×単価で基本の金額を出す、契約の上限時間を超えた分は別の単価を掛ける、深夜帯の時間は別の行として集計する、といった内容です。ここが曖昧なままだと、どんな道具を入れても正しい金額は出ません。

AIに照合の道具を作らせる

ステップ2で書いた条件を、そのままAIに渡して表計算の関数やスクリプトを作ってもらいます。渡し方の例です。

「勤怠のCSVがA列に氏名、B列に現場名、C列に実働時間で入っています。単価表は別シートにあり、氏名と現場名の組み合わせで単価が決まります。実働時間×単価を計算し、単価表に一致する行がない場合は『要確認』と表示する数式を作ってください」。

ただし、貼るだけで完成するとは考えないでください。列の名前や運用は会社ごとに違うので、出てきた数式を1件ずつ確かめます。

1社で1か月動かして差分の数を数える

作った道具で先月分を処理し、「要確認」と出た行が何件あったかを数えます。件数が多いなら、原因はたいてい読み取りの誤りか、単価表の側が最新でないかのどちらかです。

最初の1か月のゴールは「請求書が自動で出ること」ではなく、「人が見るべき行が何件か分かること」です。

FAQ

派遣先ごとに勤怠表の様式が違っても、読み取れますか?

A. 読み取れます。専用のOCRなら様式ごとに読み取り位置を設定し、汎用AIなら位置の設定なしで表に写させます。当方が仮データで試したときは2つの様式を読めましたが、合計欄の読み違いが出たので、検算を後ろに置く前提です。まずは様式が安定している1社から始めてください。

読み取りの誤りで、間違った金額を請求してしまう心配はありませんか?

A. 単価表と一致しない行を機械が自動で抜き出し、そこだけ人が確認する構成にすれば危険は減らせます。請求書発行業務では、AI-OCRで読み取ったあと請求予定データとの照合や集計・判定を経て、最後に人が確認する構成が有効とされています(TISI)。全件を目で追う代わりに、差が出た行だけを見る形に変えるのが要点です。

FAXで届く勤怠表は、いったん印刷してからスキャンした方がきれいに読めますか?

A. 逆です。印刷を挟まず、受信したデータをそのまま読ませてください。印刷とスキャンは画像を作り直す工程が2回増え、細い線や濁点が落ちやすくなります。複合機で「FAX受信をPDFで保存」の設定ができるか、情報システム担当か販売店に確認するところから始められます。

まとめ

  • 派遣先から届くPDF勤怠表の処理は、読み取り(OCRやAI)/照合・集計・例外抽出(プログラム)/最終確認(人)の3つの担当に分けて設計すると自動化できる。
  • 様式の混在・ページ数の変動・複数案件の混在・複数ページの合算・予定データとの照合は、AI-OCR単体では対応しきれないとされ、後段の処理設計が必要になる。
  • 読み取りは、文章も画像も読める汎用AIでも対応できる。仮データの実演では2様式20行を位置の設定なしで表に写せたが、合計欄の読み違いも出た。読んだ結果は検算にかけ、人が見るのは差が出た行だけにする。
  • 合計・掛け算・照合はプログラムで組み、AIにはその計算をするプログラムを書かせる。読み取りに使うAI-OCRは読み取りに集中させる。
  • FAXで届く勤怠表は、印刷とスキャンの往復をやめて受信データのまま読ませる。取引先の協力が要らず、自社の設定だけで今日試せる。

次の一歩先月届いた勤怠表を、様式が安定している派遣先1社ぶんだけ集め、単価表と突き合わせる条件を日本語で書き出す。

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大平

執筆・監修

大平 — ジッソウLAB代表

中小企業の業務改善・メルカリ物販、中古PC販売の実務経験を活かし、現場目線でAI活用を検証・発信

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