手書き報告書|新しい紙はGoogleフォームで

手書き報告書|新しい紙はGoogleフォームで AI活用のヒント
結論

これから出る紙と、すでにある紙は、分けて手を打つ

手書きの報告書をデータにするなら、紙を2種類に分けて考えると迷いません。同じ「紙をなくす」でも、打ち手がまったく違うからです。

  • これから出る紙:Googleフォームで、そもそも書かせない
  • すでにある紙:スキャンして生成AIに読ませる。枚数が多ければAI-OCR(文字を自動で読み取るサービス)
  • お客様が書く欄:フォームだけでは足りない。図や署名が残せない
  • 誰がやるか:事務担当者か現場責任者。プログラミングの知識は要らない
費用感
Googleフォームは無料。読み取りも、いま使っている生成AIで試すなら追加費用はかかりません
最初の一歩
報告書を1枚持ってきて、項目をそのままGoogleフォームに写す

紙のままだと、AIに渡す手前で止まる

「うちでもAIを使ってみたい」という相談は増えています。ただ、多くの現場ではその手前に紙が残っていて、そこで止まります。

AIに仕事をさせるには、機械が読める形のデータが要ります。紙をスキャンしてAIに読ませることもできますが、それは毎回「読み直す」作業です。最初からデータで入っていれば、その手間はそもそも発生しません。

データで貯まると、できることが増えます。日付や担当者で探せる、件数や時間を数えられる、別の用途に使い回せる。紙のままでは、この3つがどれもできません。

紙をやめることは、それ自体が目的ではなく、AIを使う前の土台づくりです。

なぜ今も「紙の報告書」が現場を止めているのか

紙の報告書は、書き終わったあとにも手間を残します。しかも1か所ではなく、現場と事務所の両方に散らばっているのが厄介です。

現場業務では、紙の書類管理に起因する非効率(現場と事務所の往復、二重転記、書類管理の困難、デジタル化の定着失敗)が深刻化している。

出典: https://canon.jp/biz/trend/homeselect-whatiswr(日付不明)

特に「二重転記」は見落とされがちです。現場担当者が紙に書いた内容を、事務担当者がExcelや業務システムに再入力する作業は、入力ミスの温床になります。しかも、その作業自体は何も生み出しません。

作業報告書の基本項目(作業日付・現場名・作業内容・作業員情報・作業進捗・安全確認事項)は、だいたい決まっています。項目が決まっているなら入力フォームに置き換えやすく、デジタル化の成功率が上がります。

これから出る紙は、Googleフォームで止める

Googleフォームは、Googleアカウントがあれば誰でも無料で作れる入力フォームです。現場担当者がスマートフォンやタブレットから直接入力すると、回答はGoogleスプレッドシートに自動で記録されます。

Googleフォームの回答は、Googleスプレッドシートに自動でエクスポートして確認できる。

出典: https://support.google.com/docs/answer/139706?hl=ja(日付不明)

事務所側は、紙を見ながら打ち直す作業がなくなります。送信されたその瞬間に内容を確認できるので、紙が届くのを待つ時間もかかりません。ただし、書かれた中身を確かめる作業や、別の業務システムへ登録する作業は残ります。

ただし、フォームには作れる入力欄と作れない入力欄があります。ここを先に知っておくと、途中で行き詰まりません。

できること 具体的に 注意点
文字・数字の入力 記述式・段落(長文用) iPadとApple Pencilなら手書きでも入力できる
選べる項目 ラジオボタン・チェックボックス・プルダウン 書き漏れと表記ゆれが減る
入力必須の指定 空のままだと送信できない 担当者名の書き忘れを止められる
手書きの図・署名 作れない 描画用の入力欄が用意されていない
写真の添付 ファイルのアップロード 回答する人のGoogleアカウントでのログインが必要

表の下2行が、この記事でいちばん実務に効くところです。文字を書いてもらうだけなら、お客様に書いてもらう欄でもフォームで足ります。

足りなくなるのは、図や署名を残したいときと、写真を添えてもらいたいときです。図は入力欄そのものが用意されておらず、写真の添付は相手にGoogleアカウントでのログインを求めることになります。

まず社内の作業者が書く報告書からフォームに移すと、つまずかずに進みます。

すでにある紙は、読ませ方が2つある

手元に残っている紙や、これからも紙で受け取る書類は、読み取ってデータにします。やり方は大きく2つです。

  1. スキャンして生成AIに読ませる
    コピー機で読み取ってPDFにし、ChatGPT・Claude・Geminiなどに渡して、必要な項目を書き出してもらう方法です。
  2. AI-OCRの専用サービスを使う
    帳票の読み取りを専門にしたサービスに取り込む方法です。DX Suite、SmartRead(旧Tegaki)、スマートOCRなどがあります(料金は各社の公式サイトで確認してください)。

意外に思われるかもしれませんが、枚数がそれほど多くない現場では、1つ目のほうが向いていることが多いです。月額の固定費がかからず、帳票ごとの設定も要りません。

「スキャンが面倒では」という声はよく聞きます。ただ、コピー機の連続スキャン機能を使えば、束のまま一度に読み取れます。実際にやってみると、手間の大半はここではありません。

比べる点 スキャン+生成AI AI-OCRの専用サービス
費用のかかり方 すでに契約していれば追加費用なし 月額が中心(公式サイトで要確認)
事前の設定 不要。書式がばらばらでも渡せる 帳票ごとの設定が要る場合がある
向く枚数 月に数十枚まで 毎月続けて大量に処理する
弱いところ 読めない字を、それらしい文字で埋めることがある 枚数が少ないと費用倒れになる

枚数はあくまで目安です。迷ったときは、次の2つで考えると決めやすくなります。

  • 読み取った結果を、人が目で確認しきれる量か 確認が追いつかないほど来るなら、専用サービスの出番です。
  • 月額と設定の手間に見合うだけ、毎月続けて紙が来るか 時期によって波がある程度なら、固定費のかからない1つ目で足ります。

どちらを選んでも、読み取った結果は人が確認します。特に生成AIは「読めなかった」と言わずに答えを出してくることがあるので、金額・品番・日付だけは目視でそろえると決めておいてください。

どちらを選ぶかの判断フロー

自社の紙がどちらに当てはまるかは、次の順で確かめると早いです。

手書きの報告書をデータにしたい
その紙は、これから新しく出る紙ですか。それとも、すでに手元にある紙ですか。
これから新しく出る紙

その報告書は、誰が書きますか。
まず無料で試す社内の作業者が書くGoogleフォームに切り替える無料。必須項目と選択式にできるので、書き漏れと表記ゆれも同時に減る
お客様に書いてもらうフォームだけでは足りない図や署名の欄が作れず、写真の添付には相手のGoogleアカウントでのログインが要る。専用の入力画面を作るか、紙で受け取って読ませる
すでに手元にある紙

読ませたい紙は、毎月どのくらいの枚数ですか。
月に数十枚までスキャンして生成AIに読ませる月額の固定費がかからない。コピー機の連続スキャンで束のまま取り込む
毎月大量に発生するAI-OCRの専用サービス読み取りから確認、出力までの流れが用意されている。契約前に自社の帳票で試して精度を確かめる
法律や取引先の都合で紙のまま残す書類がある

その書類を、あとから探すことがありますか。
探すことがある紙は保管し、データも作る原本はそのまま残し、読み取ったデータを検索用に持つ
ほとんど探さない今回の対象から外す読み取る手間のほうが大きい。無理にデータ化しない

図:手書きの報告書は、紙の種類と枚数でやり方が変わる

当方が支援した現場:自動車整備の作業受付(専用アプリの例)

先にお断りしておくと、これはGoogleフォームの事例ではありません。専用のアプリを作った現場の話です。フォームで代われる部分は、この節の最後に分けて書きます。

自動車整備の会社で、毎日の作業報告を作業者が紙にまとめていました。紙は2つの部分に分かれています。お客様に書いてもらう欄(氏名・住所・電話番号など)と、作業者が書く欄(作業内容)です。

この紙を、事務担当者があとから業務システム(kintone)に手入力していました。そこで問題が続けて起きていました。

  • お客様が書いた欄:文字が読めない・判別できない
  • 作業者が書いた欄:担当者名や作業内容の書き漏れ

この2つを止めるために、タブレットから入力する簡単なアプリを作って運用しました。入力された内容は、その場で社内に保存されます。

  • お客様に書いてもらう欄は、手書きした文字がその場でデータに変わります。本人が入力するので、読み違いが起きません。
  • 作業者が書く欄は、選べるものはすべて選択式にしました。
  • 必須の項目が空のままだと、送信できません。
事務の転記
Before(導入前)

紙を見ながら業務システムに手入力
After(導入後)

入力済みのデータがそのまま残る
この業務に関する限り、負担はほぼゼロに
繁忙期の転記時間
Before(導入前)

1日およそ1時間
After(導入後)

ほぼ発生しない
12月と3月はタイヤ交換が多く休みがないため、1か月で約31時間
お客様の記入欄
Before(導入前)

読めない字を後から確認
After(導入後)

本人がその場で入力
手書きは文字に変換される
作業者の記入欄
Before(導入前)

担当者名・作業内容の書き漏れ
After(導入後)

空欄のままでは送信できない
選べる項目は選択式に

※ 数字は当方が支援した現場での実測値です。繁忙期(12月・3月)の値なので、通常期の削減幅はこれより小さくなります。

貯まったデータは、そのまま次の仕事に使えます。車検の満了日が入っているので、案内を出す先を探すのに手間がかかりません。報告書のデータ化は、事務の削減だけでは終わりません。

これをGoogleフォームでやるなら

正直に書くと、この現場ではGoogleフォームは検討していません。専用のアプリを作ったほうが早いと考えたためです。

ただ、いま同じ相談を受けたら、まずフォームで足りるかを確かめます。お客様に手書きしてもらってデータに変える部分は、iPadとApple Pencilがあればフォームでもできるからです。これはフォームの機能ではなく、iPad側の手書き変換(スクリブル)が、ブラウザの入力欄でも働くためです。日本語はiPadOS 15から対応しています。

フォームで代われないのは3つです。手書きの図や署名を残すこと、大きな手書きパネルを出して書きやすくすること、そしてデータを社内に置くことです。この3つが要らないなら、無料のフォームで足ります。

導入の手順:フォームを1つ作るところから

作業そのものは、事務担当者か現場責任者ができます。プログラミングの知識は要らず、項目を足したり消したりする操作が中心です。専任のIT担当者がいなくても進められます。

全部を一度に切り替えると、現場が紙に戻ります。まず1種類の報告書だけにしてください。

→ くわしくは「Gemini Sparkは今のところ個人専用|代わりの手段」で解説しています。

  1. いまの報告書の項目を書き出す
    作業日付・現場名・作業内容・作業員情報・作業進捗・安全確認事項が基本です。書き漏れが多い項目に印を付けておきます。
  2. Googleフォームに同じ項目を作る
    短い文字は記述式、長い文章は段落、選べるものはプルダウンにします。印を付けた項目は「必須」にします。
  3. 回答をスプレッドシートに記録する設定にする
    これで集計がなくなります。設定方法はGoogleの公式ヘルプに手順があります。
  4. QRコードにして現場に貼る
    URLをQRコードにして掲示すると、スマートフォンのカメラからすぐ開けます。しばらくは紙と両方を動かします。
  5. 2〜4週間を目安に、紙とフォームを並べて動かす
    並行運用は、現場が慣れるための時間です。入力に詰まる箇所がなくなったら、紙をやめます。
  6. 残った紙を読ませる
    フォームに移せなかった紙だけを、生成AIかAI-OCRで読み取ります。契約する前に、自社の帳票で試して読める字と読めない字を確かめてください。

FAQ

Googleフォームに手書きの入力欄は作れますか?

作れません。Googleフォームの質問形式に、絵や署名を書くための入力欄が用意されていないためです。一方で、iPadとApple Pencilを使えば、ふつうの文字入力欄に手書きして文字に変えられます。図や署名を残したい場合は、別の入力画面を用意するか、紙で受け取って読み取ってください。

AI-OCRは手書きの崩し字も読めますか?

読める字と読めない字があります。従来の読み取りより手書きに強い一方、極端に崩れた字や、罫線の込み入った帳票では精度が落ちます。契約する前に、自社でいちばん読みにくい紙を1枚渡して試してください。

今の紙の運用を急にやめる必要がありますか?

急ぐ必要はありません。1週目にフォームを作り、そこから2〜4週間ほど紙と並べて動かし、入力に詰まる箇所がなくなったら紙をやめる進め方が現実的です。人数や報告書の種類によって期間は変わるので、現場の様子を見て調整してください。

情報が外に出ないか心配です

Googleフォームを使うと、入力された内容はGoogleのクラウドに保存されます。保存先を自社のサーバーに変えることはできません。社内の決まりでクラウドの利用に制限がある場合は、先に情報システムの担当者に確認してください。データを社内に置きたいなら、この記事の事例のように別の入力の仕組みを用意することになります。

まとめ

  • 手書き報告書の打ち手は2つに分かれる。これから出る紙はGoogleフォームで書かせない。すでにある紙はスキャンして読み取る。
  • 社内の作業者が書く報告書はGoogleフォームで足りる。必須指定と選択式を使うと、書き漏れと表記ゆれが同時に減る。
  • お客様に書いてもらう欄はフォームだけでは足りない。図や署名の入力欄が無く、写真の添付には相手のGoogleアカウントでのログインが必要になる。
  • すでにある紙は、月に数十枚までならスキャンして生成AIに読ませるほうが安く済む。毎月大量に発生するならAI-OCRの専用サービスを検討する。
  • 自動車整備の現場では、タブレット入力に変えたことで事務の転記がほぼ無くなった。繁忙期は1日およそ1時間、1か月で約31時間ぶんの作業だった。

次の一歩いちばん枚数の多い報告書を1種類だけ選び、書いてある項目をそのままGoogleフォームに写す。

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執筆・監修

大平一輝 — ジッソウLAB代表

中小企業の業務改善・メルカリ物販、中古PC販売の実務経験を活かし、現場目線でAI活用を検証・発信

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