FAX注文書をAI-OCRで自動化|手順と費用

FAX注文書をAI-OCRで自動化|手順と費用 AI活用のヒント

FAXの注文書を、担当者が社内のシステムに打ち直す。この作業をなくすために、AI-OCR(紙やFAXの文字を読み取って、パソコンで扱えるデータに変える仕組み)を検討する会社は多いはずです。

ところが、入れてみたら思ったほど時間が減らなかった、という話をよく聞きます。精度が足りないからだとは限りません。この記事では、FAX注文書の処理を4つの工程に分け、AI-OCRがどこを担い、どこが人に残るのかを整理します。

結論

AI-OCRが自動にできるのは4工程のうち1つだけ。まず受信の仕方を見直す

FAX注文書の処理は「受信・確認・登録・例外」の4つです。AI-OCRが担うのは読み取りだけです。

残る確認と登録の形を決めずに契約すると、月額を払っても手入力が残ります。

費用感
月40,000円から(DX Suite Lite・税抜・2026年8月時点)。無料枠内なら月およそ600枚まで追加なし
最初の一歩
FAXを印刷せずPDFで保存できるか、複合機の設定を確かめる

FAX注文書の処理は、4つの工程でできている

「FAXの手入力に時間がかかる」と言うとき、その中身は1つの作業ではありません。受け取り、読んで確かめ、システムに入れ、読めないものを問い合わせる。この4つが順につながっています。

AI-OCRの製品ページが示すのは、このうち2番目の前半です。残りの3つは、道具を買っても自動では変わりません。何を比べる表かというと、工程ごとに「いま人がやっていること」と「AI-OCRが代わってくれる範囲」です。

工程 いま人がやっていること AI-OCRが代わる範囲
① 受信 FAXを印刷し、担当者に配る 代わらない(自社の運用で決まる)
② 確認 品番・数量・納期を読み、原本と照らす 読み取りは代わる。確かめる作業は残る
③ 登録 基幹システム(受注や在庫を管理する会社の中心のシステム)に打ち込む 代わらない(つなぎ方を別に作る)
④ 例外 読めない字を取引先に電話で聞く 代わらない

この表の読み方は「買えば①〜④が消える」ではなく「②の半分だけが消える」です。自社の負担がどの工程に偏っているかで、AI-OCRを入れたときの効き方が変わります。たとえば読み取りより問い合わせに時間を取られている会社なら、④を減らす手を先に打つほうが早く楽になります。

ただし④を減らすのはAI-OCRの仕事ではありません。読めない字が多いなら、記入欄の作り方を取引先と相談する、品番の書き方を揃えてもらうといった、帳票と問い合わせのやり方そのものの見直しになります。この記事が扱うのは①〜③です。

つまり最初にやることは製品の比較ではなく、自社の時間がどの工程に消えているかを分けて数えることです。この記事の残りは、工程の順に打ち手を見ていきます。

どの工程に何分かかっているかを分けずに「FAXに月◯時間」とまとめて数えると、どの製品を入れても期待が外れます。

受信:紙にした時点で、読み取れる情報が減る

いちばん見落とされているのが①の受信です。ここは製品を買う話ではなく、自社の使い方を変えるだけの話なので、費用がかかりません。

当方の経験を書きます。親会社から届く生産計画の内示書(注文の前段階で、いつ何をどれだけ作るかの見通しを伝える書類)を扱っていたときのことです。届いたFAXは複合機(コピー機とFAXが一体になった機械)で印刷し、その紙をスキャンし直してから文字の読み取りにかけていました。

理由は業務の都合ではありませんでした。複合機に、印刷せずPDFで保存する機能があることを知らなかっただけです。FAXは印刷するもの、という思い込みで、周りも全員そう使っていました。

受信したデータをそのまま読ませるように変えたところ、印刷とスキャンの往復が消えて手間が減り、読み取りの結果も良くなったように感じました。

※ このときは枚数や正解率を記録していないため、どれだけ良くなったかは数字で示せません。

数字がなくても、理屈は説明できます。印刷してからスキャンすると、画像を作り直す工程が2回増えます。印刷は点の粗さで濃淡を表すため細い線が失われ、スキャンはその紙を光で読み直すので、傾きや影が新しく加わります。FAXはもともと解像度が低いので、この2回で濁点や小さな数字が消えやすくなります。

そしてこの打ち手には、下請けの会社にとって別の意味があります。画質を上げる方法として「取引先に原本のPDFで送ってもらう」「転送の回数を減らす」がよく挙がりますが、どちらも相手の協力が要ります。親会社に送り方の変更を頼むのは、現実には簡単ではありません。

印刷を挟まないことは、自社の設定だけで今日から試せます。相手を変えられない会社にとって、これが唯一の入口になります。

何を比べる表かというと、印刷を挟む受け方と、届いたデータのまま読ませる受け方です。時間の実測は取っていないため、変わるのは工程の数と画像を作り直す回数で示します。

受信の流れ
Before(印刷してから読ませる)

受信→印刷→配布→スキャン→読み取り
After(届いたデータのまま読ませる)

受信→保存→読み取り
印刷とスキャンの2工程が消える
画像を作り直す回数
Before(印刷してから読ませる)

2回(印刷とスキャン)
After(届いたデータのまま読ませる)

0回
細い線や濁点が失われにくい
かかる費用
Before(印刷してから読ませる)

用紙とトナー、その手間
After(届いたデータのまま読ませる)

0円(複合機の設定だけ)
製品の検討と並行して試せる

この表で見てほしいのは、右の列が「新しい道具を買った結果」ではないことです。同じ複合機の設定を変えただけで、工程が2つ減っています。読み取りの精度を上げる方法を探す前に、まずここが自社で使えるかを確かめてください。

複合機の機種によっては、受信したFAXを保存する設定が管理者向けの画面に隠れていることがあります。保存先のフォルダと保管期間もあわせて決めてから切り替えてください。

確認:機械で確かめられる項目と、人が見る項目を分ける

②の確認は、AI-OCRを入れても丸ごとは消えません。読み取った結果が正しいかどうかは、別に確かめる必要があるためです。ここを全件目で見る運用にすると、削減した時間がそのまま戻ってきます。

そこで、人の代わりに機械に確かめさせられる項目を切り分けます。品番マスタ(自社に登録してある品番の一覧)と突き合わせる、数量が桁として妥当か見る、納期が日付の形になっているか見る。これらは読み取りの精度に関係なく、あとから足せる仕組みです。

何を比べる表かというと、機械の照合だけで登録してよい項目と、人の目を残す項目です。

分類 当てはまる項目 そう分ける理由
機械の照合で登録してよい 印字された発注番号、チェックの有無、決まった書式の日付、マスタと完全に一致した品番 形が決まっていて、正解と突き合わせられる
人の目を残す 手書きの品番、桁の多い型番、数量、金額、納期の変更、自由に書かれた欄、訂正線や訂正印 読み違いがそのまま発注の事故になる

この分け方の要点は「AIを信じるかどうか」ではありません。正解と突き合わせられる項目だけを機械に任せる、という線引きです。品番はマスタという正解表がありますが、手書きの数量には突き合わせる相手がいません。だから残ります。

確認の重さは帳票の状態で変わります。当方が別に検証したときは、全項目を目視していた段階で、手書きが多くかすれのある帳票に1枚あたり5〜10分の確認と修正がかかっていました。読み取りの信頼度(AIがその読み取りにどれだけ自信があるかの数値)が低い項目だけを確認画面に出す形にすると、この時間は短くできます。

※ これは当方が扱った帳票での一例です。枚数と項目数までは記録していないため、自社の実物で測ってください。

FAXで届いた注文書を読み取った
読み取った項目に、突き合わせる正解があるか?
印字された項目だけで、品番もマスタと一致した

ここだけが本当に減る工程読み取りの信頼度も高いそのまま登録する人の確認を通さない
手書きの数量・金額・納期の変更が入っている

突き合わせる正解が無い項目がある確認画面に出すFAX画像と読み取り結果を並べて人が直す
そもそも文字が読み取れていない

かすれ・傾き・罫線との重なりが多い受信の仕方を見直す印刷を挟まず、届いたデータのまま読ませる

図:読み取った結果を、そのまま登録してよいかを分ける

この図の3本目に注目してください。読み取れないときの答えが「別のAIに替える」ではなく「受信の仕方を見直す」に戻っています。前の節で書いたとおり、画質はモデルの性能より手前にある条件だからです。

登録:読み取れても、打ち直しが残ることがある

③の登録は、意外とつまずく場所です。AI-OCRの出力はCSV(表計算ソフトで開ける、文字だけのファイル)であることが多く、そこから基幹システムへ入れる部分は別に用意する必要があります。

読み取りまでは自動になったのに、担当者が画面を見ながら打ち直している。こうなると、工程が1つ増えただけで終わります。

製品を選ぶときは読み取りの精度より先に、自社の基幹システムへどうやって入れるかを確かめてください。CSVを取り込む窓口があるか、無ければ誰が作るかまでを含めて見ます。

つなぎ方が決まらないうちは、対象を1社分の帳票に絞って始めるほうが安全です。範囲が狭いうちは打ち直しが残っても負担が小さく、つなぎ方を作ってから広げれば、その効果がそのまま全体に効きます。

費用は「月額」と「無料枠」の2つで決まる

専用のAI-OCRを検討する段になったら、月額だけを見ても自社の負担は分かりません。多くの製品は月額に読み取りの無料枠が付いていて、それを超えた分だけ追加で払う形になっているためです。

何を比べる表かというと、国内で広く使われているDX Suiteの3つのプランです。金額は税抜で、2026年8月9日に公式の料金ページで確認しました。いちばん右の枚数は、無料枠を単価で割って当方が計算した目安です。

プラン 月額 初期費用 月の無料枠 項目抽出の単価 無料枠で読める枚数の目安
Lite 40,000円〜 0円 18,000円分 1枚 30円〜 約600枚
Standard 100,000円〜 200,000円 50,000円分 1枚 10円〜 約5,000枚
Pro 200,000円〜 200,000円 200,000円分 1枚 10円〜 約20,000枚

この表の使い方は「どれが安いか」ではなく「自社の枚数がどこに入るか」です。先月届いたFAXが月200枚なら、Liteの無料枠600枚の内側に収まるので、月40,000円がAI-OCRサービスの月額負担になります。1枚あたり200円という計算です。ここに基幹システムへつなぐ費用は入っていません。前の節のとおり、そのつなぎ方は別に用意する必要があります。

枚数が増えると、Liteは無料枠を超えた分の支払いが積み上がります。表の数字で計算すると、月およそ2,600枚でLiteとStandardの総額が並びます(どちらも100,000円)。それより多く読むならStandardのほうが安くなります。

ただし単価は「30円〜」「10円〜」という下限の表記で、1枚から抜き出す項目の数によって上がります。2,600枚はあくまで表の最小単価で計算した目安なので、実際の境目は自社の帳票で見積もりを取って確かめてください。判断を分けるのが精度ではなく枚数だという点は、どちらにしても変わりません。

なお同じ料金ページには、1か月だけ試すトライアルのプランもありました(基本料金40,000円〜・無料枠18,000円分)。名前は試用ですが有料です。費用をかけずに自社の帳票が読めるかだけ確かめたい段階なら、マイクロソフトのAzure AI Document Intelligence(帳票の読み取りサービス)が月500ページまで無料で使えます(2026年8月時点)。

見積もりを取る前に、先月届いたFAXの枚数と、1枚あたりの確認時間を出しておいてください。この2つがあれば、提示された金額が自社に見合うかを自分で判断できます。

→ くわしくは「AI導入費用は月1万円から|3タイプ別の内訳」で解説しています。

導入までの手順

順番に意味があります。1と2を飛ばすと、効果が出たかどうかを比べる相手がなくなります。

動かす人は3種類です。日々FAXを打ち込んでいる事務の担当者、複合機の設定を触れる社内の管理者(見つからなければ保守を頼んでいる販売店)、そして品番マスタと基幹システムを持っている受注の責任者。新しくITの担当者を置く必要はありません。

現場からは「確認が二度手間になった」という声が出ます。読み取り結果を全部見る運用になっていないか、4で決めた条件が働いているかを確かめてください。

  1. 先月のFAXを工程ごとに数える
    枚数と、受信・確認・登録・例外のそれぞれにかかった時間を分けて書き出します。数えるのは、いま実際に打ち込んでいる事務の担当者です。ここを分けないと、あとでどの工程が改善したのか分かりません。
  2. 印刷を挟まない受信に切り替える
    複合機の設定でPDF保存が使えるかを、その機械を管理している人に確かめてもらいます。設定画面で見つからなければ、保守の販売店に聞くのが早いです。費用がかからないので、製品の検討と並行して先に試せます。
  3. 実物を10枚読ませて、項目ごとに数える
    きれいな見本ではなく、かすれや手書きのある実物を混ぜます。数えるのは、間違えるとやり直しになる項目に絞ります。品番と数量が読めていれば備考欄の誤りは後から直せるので、この段階で全項目の正解率を出す必要はありません。
  4. 機械で確かめる条件を決める
    品番マスタと一致したら人を通さず登録する、といった線引きを先に文章にします。決めるのは受注の責任者と、品番マスタを持っている人です。数量や金額のように突き合わせる正解が無い項目は、桁の確認をしたうえで人に回します。
  5. 取引先を1社に絞って1か月動かす
    選ぶのは、毎月一定の枚数があり、かすれや手書きが普通に混ざっている取引先です。書式のいちばんきれいな会社を選ぶと効果を大きく見積もり、例外だらけの会社を選ぶと使えないと判断してしまいます。1社なら、うまくいかなくても従来の手順に戻せます。
  6. 確認にかかった時間を、1と同じ方法で測る
    1を数えた人が、同じ数え方で測ります。数え方が違うと比べられません。ここで初めて、契約に見合うかどうかが数字で言えます。

「年間6万時間削減」という事例の読み方

AI-OCRの導入事例には大きな削減時間が並びます。ただし、そのままでは自社に当てはまりません。数字を自社の規模に直す手順を、公開されている事例で試してみます。

DX Suiteの公式サイトには、日本通運が全国93拠点に導入し、年間で6万時間弱の事務作業を削減したという事例が載っています。導入前は1拠点あたり毎月平均450件の帳票を手入力していたとされています。

この6万時間を、拠点の数と月数で割ってみます。93拠点で12か月ですから、1拠点あたりでは月およそ54時間です。さらに450件で割ると、1件あたりおよそ7分という数字になります(割り算は当方によるものです)。

ここまで下ろすと、自社に当てはめられます。FAXの注文書が月200件なら、200件×7分でおよそ23時間。これが上限の目安になります。「年間6万時間」は自社と桁が違いますが、1件あたりに直せば比べられる数字になります。

この事例の対象帳票は運転日報とアルバイト勤務日報で、注文書ではありません。書式も確認のやり方も違うので、7分という数字はそのまま持ってこられません。あくまで「事例の数字は1件あたりに割り戻してから読む」という手順の例です。

だからこそ、削減時間を先に約束しないことが大事です。導入の前と後を同じ数え方で記録しておけば、次にどこへ投資するかを自社の数字で決められます。

FAQ

手書きのFAXでも読み取れますか?

読み取れますが、確認の作業は残ります。手書きが多くかすれや傾きのある帳票では、全項目を目視していた段階で、当方の検証で1枚あたり5〜10分の確認と修正がかかりました。信頼度の低い項目だけを確認画面に出す形にすると、この時間は短くできます。帳票の状態で大きく変わるので、自社の実物で測ってください。

費用はいくらから始められますか?

自社の帳票が読めるかを確かめるだけなら0円から始められます。Azure AI Document Intelligenceが月500ページまで無料で使えるためです(2026年8月時点)。専用サービスのDX Suiteは月40,000円から(税抜)なので、読めることを確かめてから検討して間に合います。

精度が出ないとき、別のAIに替えるべきですか?

先に受信の仕方を見てください。印刷を挟まずPDFのまま読ませる、転送の回数を減らす、といった手のほうが費用をかけずに試せます。それでも足りないときに、読み取り方式や製品の見直しに進みます。

担当者の負担は増えませんか?

入力の作業は減りますが、確認の作業は一定期間残ります。担当者の役割が「打ち込む」から「確かめる」に変わることを、切り替えの前に共有しておくと混乱が小さくなります。機械で確かめられる条件が増えるほど、確認に回る件数は減っていきます。

まとめ

  • FAX注文書の処理は受信・確認・登録・例外の4工程で、AI-OCRが自動にできるのは②の読み取りだけ。残りは道具を買っても変わらない
  • 受信したFAXを印刷してからスキャンすると画像を作り直す工程が2回増え、細い線や濁点が失われる。印刷を挟まずPDFのまま読ませる
  • 相手が親会社の場合、送り方の変更は頼みにくい。自社の設定だけで済む「印刷を挟まない」が現実的な入口になる
  • 機械に任せてよいのは、品番マスタのように突き合わせる正解がある項目だけ。手書きの数量や金額は人の確認を残す
  • DX Suite Liteは月40,000円で無料枠18,000円分(税抜・2026年8月時点)。項目抽出なら月およそ600枚まで追加の支払いがなく、判断を分けるのは精度ではなく枚数

次の一歩先月届いたFAX注文書の枚数を数え、複合機の設定でPDF保存が使えるかを確かめる。

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※ 料金は2026年8月9日時点で公式サイトを確認した公開情報です。最新の条件は各サービスの公式サイトでご確認ください。

執筆・監修

大平一輝 — ジッソウLAB代表

中小企業の業務改善・メルカリ物販、中古PC販売の実務経験を活かし、現場目線でAI活用を検証・発信

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