ECの売れ筋を毎日自動集計|数式はAIに書かせる

ECの売れ筋を毎日自動集計|数式はAIに書かせる AI活用のヒント
結論

数式はAIに書かせる。CSVを貼れば、価格改定と廃番の材料が毎日そろう

売れ筋が分からないのは、データが無いからではなく、集計が月に1回しか動いていないからです。直近7日・30日の売上を出すシートは、どの列をどう集計するかを決めてAIに伝えれば、数式を書いてもらって作れます

費用感
Googleアカウントがあれば、関数とGASでの集計は追加費用なしで始められる
最初の一歩
直近3か月の受注データを1枚のシートに貼り、この記事の指示文をAIへ渡して集計の数式を作る

「売れ筋が分からない」の正体は、集計が月に1回しかないこと

ECの店長に「何が売れていますか」と聞くと、多くの人は上位数点の商品名をすぐ答えます。ところが「先月と比べて売れ行きが落ちた商品は」と聞くと、答えが止まります。

止まる理由は感覚の問題ではありません。月次の締め処理でしか売上を横に並べていないため、動きの変化を見る間隔が1か月になっているからです。1か月あれば在庫は積み上がり、値下げのタイミングも過ぎます。

もうひとつの原因は、データが1枚にまとまっていないことです。販路が複数ある店では、モールごとの管理画面を開いて数字を目で拾い、手元の表に打ち直しています。この作業があるかぎり、集計は「気力のあるときだけやる作業」のままです。

売れ筋が見えない原因は分析手法ではなく、集計の頻度と、データが1枚に集まっていないことにあります。

受注伝票をもとに直近7日と30日の売上を自動で出す分析シートは、スプレッドシートで作れます(teps.io の解説より)。判断の間隔が1か月から1日に縮みます。

→ くわしくは「手書き日報をタブレット化|集計6日が1日に」で解説しています。

受注データから直近7日と30日の売上を自動で出す

作るシートは2枚だけです。1枚は受注データをそのまま貯める原本、もう1枚は関数で計算する集計シートです。この分け方を最初に決めておくと、あとで関数を触っても元のデータが壊れません。

自動になるのは計算のほうです。受注データをCSVで書き出して貼る作業は手で行い、貼ったあとの集計は関数がやり直します。

元の「フォームの回答」シートはデータ保管の原本とし、別の「集計」シートでCOUNTIF関数やピボットテーブルを使ってデータを参照すると、運用中のトラブルを減らせる。

出典: Jicoo(Googleフォームとスプレッドシートの連携解説)

これはGoogleフォームの話ですが、受注データでも同じです。原本を直接いじると、行を並べ替えた瞬間に数式の参照がずれます。

原本シートと集計シートを分ける

  1. 原本シートを作る
    販路の管理画面から受注データをCSVで書き出し、そのまま貼り付けます。中身は書き換えません。
  2. 集計シートを別に作る
    同じファイル内に「集計」シートを追加します。ここに数式を書きます。原本シートには数式を1つも置きません。
  3. 販路ごとに1枚ずつ、同じ列の順で貼る
    販路が複数あるなら、原本を販路ごとのシートに分け、貼るときに注文日・商品コード・商品名・数量・売上金額・原価の順にそろえます。CSVの列順が違う販路は、貼る前にこの順へ並べ替えます。中身は直さず、並べる順だけをそろえます

集計シートに作る列を決める

条件が複数ある合計にはSUMIFS関数が役立ちます(coopel.ai の解説より)。ECの売れ筋分析では商品コードと日付の2つを同時に指定します。式そのものはこのあとAIに書かせるので、ここでは「どの列に何を出すか」だけ決めます

  1. 商品コードの一覧
    原本の商品コード列から、重複を除いて縦に並べた列です。
  2. 直近30日と直近7日の売上
    商品コードと「注文日が今日から30日前以降」の2条件で合計し、隣に日数を7に変えた列を置きます。基準を今日にしておくと、翌日には範囲が自動でずれます。
  3. 1日あたりの売上で7日と30日を比べる列
    直近7日の売上を7で割った数を、直近30日の売上を30で割った数で割ります。この記事ではこれを「日平均の比」と呼びます。1なら直近1週間のペースは1か月の平均どおりで、1を大きく下回る商品が、売れ行きの落ちている商品です。

複数の販路をIMPORTRANGEで1枚に集める

販路ごとにファイルを分けているなら、複数のスプレッドシートから集計するIMPORTRANGE関数が使えます。手作業でのコピー&ペーストの手間を省けます(RPAテクノロジーズの解説より)。

ファイルを分けたまま集められるので、担当者ごとに入力ファイルが違う現場でも、集計側だけを作り替えれば済みます。ただし列の並びが違うと、集めた先でそろえ直す作業が残ります。ステップ1の列名統一を先にやる理由です。

IMPORTRANGEは参照元のファイルへのアクセス許可が必要です。共有設定を変えると数字が空になるので、権限を持つ人を決めておきます。

集計の数式は、AIに書かせる

ここまでの手順で決めたのは、「どの列を、どの条件で合計するか」です。売上の規模は売上金額、売れている速さは数量、と見る列を決めておくと、指示文がそのまま書けます。式そのものを覚える必要はありません。決めた中身をそのまま伝えれば、生成AIが数式を書きます。

次の指示文は、そのままChatGPTやClaudeに貼って使えます。自店に合わせて書き換えるのは、シート名と列の並びだけです。

Googleスプレッドシートの数式を作ってください。

【原本シート】シート名「受注」
A列=注文日、B列=商品コード、C列=商品名、D列=数量、E列=売上金額、F列=原価

【やりたいこと】集計シートに次の列を作ります。
- A列:原本の商品コードを、重複を除いて自動で並べる
- B列:その商品の直近30日の売上金額の合計
- C列:その商品の直近7日の売上金額の合計
- D列:1日あたりの売上で7日と30日を比べた値(C列÷7 を B列÷30 で割る)

【決めごと】
- 期間は「今日を含む直近7日・30日」とし、翌日には範囲が自動でずれるようにする
- B列が0のときD列はエラーにせず空欄にする
- A2・B2・C2・D2に入れる数式を、それぞれ1つずつ示す

返ってきた式をA2・B2・C2・D2に貼れば集計シートは動き出します(A列は自動で伸びるので、B〜D列だけ下へコピーします)。うまくいかないときは、表示されたエラー文をそのまま貼って返すと、直した式が返ってきます。

同じやり方で、あとに出てくるGAS(Googleのサービスを自動で動かすプログラム)も書いてもらえます。そのときは「毎月1日の朝に前月分を集計してサマリーシートへ書き出す」のように、いつ・何を・どこへ、の3つを伝えます。

出てきた式は、必ず1商品だけ手で計算して突き合わせてください。当方の実務では、AIに文字数を数えさせても正確な値が返らないことが分かっています。数える仕事は数式に、AIには数式を書く仕事を任せる、という分け方にすると、結果が毎回同じになります。GASも同じで、コピーしたシートで実行して結果を見てから、決まった時刻での実行やメール送信を有効にします。

価格改定は5つの軸で判断する(在庫・販売速度・競合価格・時間要因・粗利)

集計が毎日動き出すと、次に迷うのは「この数字を見て、値段をどうするか」です。ECにおける価格変更の代表的な判断軸として、「在庫」「販売速度」「競合価格」「時間要因」「粗利管理」の5つが挙げられています(日本ECサービス協会)。

次の表は、5つの軸をシートのどの列で見るかを整理したものです。ここまでの手順で埋まるのは販売速度と粗利率の2列で、在庫数・競合価格・初回入荷日は別に列を足す必要があります。

判断軸 シートで見る列 値下げを考える状態
在庫 在庫数、在庫回転 在庫が積み上がっている
販売速度 日平均の比(7日と30日) 比が1を大きく下回る
競合価格 競合価格の記録列 自店だけ高い状態が続く
時間要因 初回入荷からの経過日数 季節を過ぎた、型落ちした
粗利管理 売上−原価の粗利率 値下げしても粗利が残る

この表の読み方は、1つの軸だけで決めないことです。販売速度が落ちているという理由だけで値下げすると、実は競合が同じ商品を値下げしていただけで、こちらは粗利を削っただけ、ということが起きます。逆に在庫が積み上がっていても、季節がこれから来る商材なら値下げは早すぎます。

自社に当てはめるときは、5列すべてを毎回埋める必要はありません。まず販売速度と粗利率の2列だけをシートに足し、その2つが同時に悪い商品から見ていくと、判断の対象が現実的な数に絞れます。

値下げの判断は5軸のうち2つ以上が同じ方向を示したときに検討する、と決めておくと、その場の勢いで値段を動かさずに済みます。

→ くわしくは「AI導入費用は月1万円から|3タイプ別の内訳」で解説しています。

来月の売れ数を関数で見積もる手順

集計シートで分かるのは、いま何が売れているかです。もう1つ知りたいのは、その商品が伸びているのか、落ちているのかという傾きです。これもスプレッドシートの関数で出せます。

Googleの公式ヘルプによると、FORECAST関数は線形回帰に基づいて、指定したx値に対するy値の将来値を計算します。線形回帰とは、過去の点に1本の直線を当てはめる計算のことです。書き方は FORECAST(x, データ_y, データ_x) です。xが予測したい先の位置、データ_yが実績の売上、データ_xがその期間にあたります。

複数の月をまとめて出すTREND関数もあります(同ヘルプ)。この式も、「月別売上の列から翌月を予測する式を作って」と伝えればAIが書きます。

集計シートに月別売上の列があるなら、足す作業は2つだけです。

FORECASTもTRENDも、過去の数字に1本の直線を当てはめて先を延ばす計算です。季節の山谷、競合の値下げ、テレビでの紹介のような、直線に乗らない事情は入りません。出た数字は「このまま何も起きなければ」の見込みとして扱い、そのまま発注数にしないでください。

  1. 月に連番を振る
    月別売上の左に1、2、3…と番号を置きます。これが計算上の「時間」になります。
  2. 翌月の番号でFORECASTを書く
    実績が12か月ぶんあるなら、xに13を入れます。返ってくるのが、いまの傾きのまま進んだ場合の翌月の売上です。

AIで売れ筋を予測する前に、データを1枚にそろえる工程がある

関数での見積もりの次に来るのが、AIによる需要予測です。つまずくのは、たいていツール選びではありません。その前のデータです。

当方が運用している、複数の店舗と部署をもつ現場でも同じでした。在庫と発注という一番大事なデータが、ばらばらの形で置かれていました。

  • 店舗ごと・部署ごとに管理の仕方が違う(項目名も単位も違う)
  • 電子データもあれば、紙のまま残っているものもある

これを1つにまとめる作業が第一段階で、全体でいちばん大変な作業になりました。体感では、プログラムを組んでシステム化するよりも大変です。ツールは買えば手に入りますが、データのそろえ方は買えません。

デジタル化すればAIが使える、という話ではありません。デジタルでもばらばらなら足りません。紙をスキャンして画像にしただけでは読めず、決まった形に並べ直して、あとから検索・集計できる状態にして初めて使えます。

この工程は現場の担当者だけでは終わりません。「うちはこの形でデータをまとめる」という会社全体の決めごとが要ります。店舗ごとに項目名や単位が違うままでは、いくら集めても1つの表になりません。

次の表は、この段階を越えたあとに、当方の現場で実際に変わった数字です。

項目
発注作業の時間 1日120分 1日70〜80分(3〜4割減)
在庫金額 2〜3割の圧縮

読み方に条件が2つあります。1つは、ばらばらだったデータを1つにまとめたうえで需要予測を入れた結果だということ。予測ツールを入れただけではこの数字になりません。もう1つは、発注作業がゼロになったわけではないこと。手で集計していた部分が消えて、AIが出した数を確認して決める仕事が残った結果が、この70〜80分です。

在庫金額の2〜3割は金額でみた圧縮で、店舗数・商品点数・もとの管理方法によって変わります。同じ割合になるとは限りません。

ここまでの手順で作ったシートが、その第一段階にあたります。原本と集計を分け、販路をまたいで列の並びをそろえる作業は、あとでAIにデータを渡すときにそのまま効きます。この段階を越えると、予測の数字が使えるようになり、店舗ごとに違っていた作業のやり方もそろっていきます。

廃番にするかどうかの線引きをシート上で持つ

廃番の判断は、感情が入りやすい場所です。仕入れの経緯や、少数でも買い続けてくれる客のことが頭をよぎるため、いつまでも棚に残ります。

判断を進めるには、5軸のうち販売速度・在庫・粗利の3列を使い、線引きを先に決めます。次の比較は、線引きを決める前と決めたあとで店の作業がどう変わるかを整理したものです。

判断のきっかけ
Before(導入前)

在庫棚卸しで気づいたとき
After(導入後)

日平均の比が基準を下回ったとき
7日と30日の日平均の比を毎日自動計算
判断の材料
Before(導入前)

記憶と印象
After(導入後)

販売速度・在庫数・粗利率の3列
SUMIFSで商品ごとに自動集計
判断の間隔
Before(導入前)

月次または不定期
After(導入後)

シートを開いた日
TODAY関数で期間が毎日ずれる

この比較で変わるのは、廃番にする商品の数ではありません。判断の材料が記憶から列の数字に置き換わり、いつ見ても同じ基準で並ぶようになります。

自社に当てはめるなら、まず「日平均の比が0.5を下回った状態が2か月続き、かつ在庫が3か月分以上残っている」のような条件を、自店の回転に合わせて書き出します。その条件も数式にしてAIに書かせ、該当した商品だけを別のタブへ自動で並べます。候補は毎日入れ替わりますが、続けるか、値下げして在庫を減らすか、廃番にするかは、毎月まとめて決めます。

廃番の判断は、条件に合う商品を機械的に並べるところまでを自動化し、最後の判断は人が行う形にすると運用が続きます。

GASで毎月の集計を自動化するときの注意点

関数で組んだシートが回り始めたら、次はGAS(Google Apps Script)の出番です。GASを使えば、毎月の売上データを自動で集計してサマリーシートに書き出すことができ、手作業の集計ミスをなくせます(gxo.co.jp の解説より)。

関数との違いは、決まった時刻に勝手に動き、結果を別のシートやメールに残せる点です。月初の朝に前月分のサマリーができている、という運用になります。

無料アカウントのメール送信は1日100件まで

集計結果を関係者にメールで送るなら、送信数の上限に注意します。無料のGoogleアカウントでは1日のメール送信先が100件まで、Google Workspaceでは1,500件までです(gxo.co.jp の解説より)。社内数人へのサマリー送信なら無料で足りますが、購入者へのフォローメールのように件数が増える用途に広げると、途中で止まります。

ExcelのマクロがあるならApps Scriptへの書き直しが要る

いまExcelのマクロ(VBA)で集計している店が、そのままスプレッドシートへ移す場合は、注意点が1つあります。これはマクロを使っている現場だけの話で、関数と手入力だけの店には関係ありません。

当方が支援した現場では、ExcelのVBAでシートに1つずつデータを書き込む処理を、そのままApps Scriptに書き写したところ、動作に時間がかかりました。ローカルのExcelではほとんど時間がかからない書き方です。

原因は関数や画面の違いではなく、セルへの書き込み1回ごとに通信が発生するという前提の違いでした。対処は、配列にデータをためて一括で貼り付ける処理に置き換えることです。

移行を考えるときは「同じことができるか」ではなく「同じ書き方が通用するか」を先に確かめます。マクロがあるなら、書き直しの工数を見込んでおきます。

FAQ

関数を書いた経験がありません。最初に覚えるべき関数はどれですか。

A. 数式はAIに書かせられるので、関数を覚えていなくても始められます。ただし出てきた式が何をしているかは知っておくほうが安全です。SUMIFS(条件に合う行だけを合計する関数)とIMPORTRANGE(別ファイルのデータを取り込む関数)の2つで、この記事の集計はできています。

費用はいくらかかりますか。

A. Googleアカウントを持っていれば、スプレッドシートでの集計そのものに追加費用はかかりません。GASでメールを送る場合は、無料のGoogleアカウントで1日100件までという上限があり、それを超える使い方をするならGoogle Workspaceを検討します。数式を書かせるAIの利用料は、使うサービスとプランで変わります。まず手元で使えるものを試し、足りなければ有料プランを考える順番で足ります。

販路がモールと自社サイトで分かれています。集計できますか。

A. 販路ごとにファイルを分けたままでも、IMPORTRANGE関数で1枚に集められます。ただし列の並びが違うと、集めた先でそろえ直す作業が残ります。CSVを貼る前に並びを統一しておくと、あとの作業が減ります。

集計シートを作ったあと、誰が運用すればよいですか。

A. 数字を毎日見る人(多くは店長)が持つのが続きます。作った人と見る人が違うと、列の意味が伝わらず放置されるためです。シートの設計や、GASでの自動集計の組み方に迷う場合は、ジッソウLABのゲンバAIへご相談ください。

まとめ

  • ECの売れ筋が見えない原因は分析手法ではなく、集計が月1回しか動いていないことと、販路ごとにデータが分かれていることにある。
  • 直近7日と30日の売上を出す数式は、列の並びと集計したい中身を伝えれば生成AIが書く。1日あたりの売上で7日と30日を比べ、1を下回る商品が売れ行きの落ちている商品にあたる。
  • 価格改定の判断軸は「在庫」「販売速度」「競合価格」「時間要因」「粗利管理」の5つで、2つ以上が同じ方向を示したときに検討すると判断がぶれない。
  • 翌月の売れ数はFORECAST関数で見当をつけられる。過去の実績を直線で延ばす計算なので、季節の山谷や競合の値下げは織り込まれない。
  • AIによる需要予測でつまずくのはツール選びではなく、その前のデータ。項目名と単位をそろえて1枚にする工程がいちばん大変で、そこを越えると予測の数字が使えるようになる。

次の一歩直近3か月の受注データを1枚のシートに貼り、この記事の指示文をAIへ渡して数式を作り、上位20件を見る。

自社の販路や商品構成に合わせた集計シートの設計・自動化の導入は、ぜひ、ジッソウLABのゲンバAIへ無料でご相談ください。

執筆・監修

大平 — ジッソウLAB代表

中小企業の業務改善・メルカリ物販、中古PC販売の実務経験を活かし、現場目線でAI活用を検証・発信

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