AIエージェントとは、AIが複数の作業を自分の判断でつなげて進める仕組み
生成AIが「聞かれたことに答える道具」だとすれば、AIエージェントは「次の作業を自分で判断し、複数の作業をつなげて目的の達成まで動き続ける仕組み」です。何を任せるかは、業務ごとに社長が線引きします。
AIエージェントは生成AIと何が違うのか
「AIエージェント」という言葉を聞く機会は増えましたが、生成AIと何が違うのか、いまさら人に聞きにくいと感じることも多いはずです。AIエージェントは、生成AIをもう一段進めた仕組みです。
総務省と経済産業省は2026年3月、「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を改定しました。この中でAIエージェントは、「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義されています。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、従来型の生成AIとAIエージェントの違いを次のように整理しています(IPA調べ)。
| 観点 | 生成AI(単発の受け答え) | AIエージェント(複数ステップを自律実行) |
|---|---|---|
| 目的 | 質問や指示への応答 | 与えられた目標の達成 |
| 次の作業を誰が判断して進めるか | 人が都度指示する | AIが自分で判断して次の作業へ進む |
| 外部ツールとの連携 | 限定的 | メールや表計算など外部のツールと連携しやすい |
ただし、AIエージェントだからといって何でも任せてよいわけではありません。
AIエージェントは実際に何ができるのか
KDDIの解説記事では、AIエージェントの動き方を一連の流れで説明しています(KDDI調べ、2025年10月)。「環境を観測する→状況を認識する→次の行動を決める→実行する→結果を確認する」という流れです。
中小企業に近い活用例は次のとおりです。
- 問い合わせの一次対応:定型的な問い合わせへの対応を自動で進める
- 繰り返しの事務作業:請求書の処理、メールの作成、日程調整といった作業を進める
- プログラムそのものを書く:「この集計をするプログラムを書いて」と頼むと、コードまで書いて直してくれます。GitHub Copilot Coding Agentはその例です(IPA調べ)
AIエージェントが得意なのは、「読む→判断する→次の作業に渡す」がひと続きになっている業務です。
途中で人が次の指示を出すか、AIが次の作業へ進むかで比べると、次のようになります。
表の内容を自社に当てはめてみると、AIエージェントが力を発揮するのは「AIが一度答えて終わり」ではなく「次の作業に自動でつながる」業務です。
何を任せて、何は人が決めるべきか
AIエージェントが登場したからといって、すべてをAIに任せてよいわけではありません。作業の性質ごとに、任せる先を分けます。
| 任せる先 | 何を任せるか |
|---|---|
| プログラム(決まった処理) | 数える・計算する・決まった基準で仕分ける・毎日同じ時刻に動かす |
| AIエージェント | 状況を読んで下書きを作る・複数の作業をつなげる・そのためのプログラムを書く |
| 人 | 最初の判断基準を決める・初めて出た例外への対応・送信や公開、削除など取り消しにくい操作の承認 |
この境界をあいまいにすると、AIエージェントが例外的な判断まで自分で進めてしまい、人の確認を通さないまま実行される恐れがあります。表のような形で先に書き出しておくと、迷ったときに立ち返る基準になります。
AIエージェントは実際の仕事でどう使われ始めているのか
AIエージェントは、経理や社内の書類チェックといった実務の道具に組み込まれ始めています。各社の発表から、AIに任せている作業を拾うと次のとおりです。
- 経理・労務の作業をまとめて進める:マネーフォワードは2026年4月、『マネーフォワード AI Cowork』を発表しました。請求書発行、入金消込、経費精算、給与計算などを、会話で頼める仕組みです。発表時点では、マネーフォワード クラウドの利用者向けに2026年7月の提供開始を予定していました。
- 税理士事務所の記帳から申告書の点検まで:freeeは「freee顧問先管理 | AIエージェント」を発表しました。税理士事務所向けで、2026年9月15日からの有償提供としています。記帳、記帳ルールの候補づくり、月次チェック、申告書チェックの4種類があります。
- 社内の決裁や法務のチェック:パナソニック コネクトは2025年7月、AIエージェントを試験的に使い始めたと発表しました。対象は、経理の決裁作成支援、法務の下請法チェック、マーケティングのメール添削の3つです。
- 手順の多い作業と資料の仕上げ:OpenAIは「ChatGPT Work」を用意しています。長く複数の手順がある作業や、仕上がった資料づくりに使うよう案内しています(2026年9月時点)。
人の関わり方まで書いているのは、マネーフォワードとfreeeです。マネーフォワードは「AIが作成した下書きを人間が確認・承認する」手順を備えています。
freeeの記帳エージェントは、ルールや確度の高い推測で記帳できるものは自動で進め、確度の低いものは人の確認・修正に回します。月次チェックでは、AIが次にとるべき対応を提案し、人は内容の確認と対応の判断に集中できるとしています。
2社の発表を見ると、どこまでAIが進め、どこで人に戻すかは、機能ごとに決められています。
新しい道具を探す前に、すでに契約している会計ソフトや業務ソフトにAIエージェントの機能が加わっていないかを確かめると、手間をかけずに試せます。
→ くわしくは「AI格差はもう始まっている|使う会社と使わない会社」で解説しています。
Claude デスクトップに請求書の一覧づくりを任せると、どう動くのか
当方の担当者が、Claude デスクトップアプリの「Cowork」で試してみました。Coworkは、複数の手順がある作業を代わりに進めるモードです。
使えるのは有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)です(Anthropic公式ヘルプ、2026年9月時点)。
用意したのは、記事用に作った架空の請求書PDF5枚です。和暦の日付、値引きの行、支払期日の書かれていない請求書を混ぜました。依頼したのは次の一文だけです。
このフォルダの請求書PDFを全部読んで、取引先名・請求日・支払期日・税込金額を1つのExcelにまとめてください。支払期日が近い順に並べ、合計はExcelの数式で出してください。読み取れない項目は推測で埋めず空欄にし、表の下に理由を書いてください。
Claudeは次の順に、自分で作業を進めました。
- フォルダを使ってよいか聞く:「請求書PDFを読み取り、一覧のExcelを作成するため」と理由を添えて、許可を求めた
- 5枚を読み、結果を表で先に見せる
- 作る前に2つ質問する:Excelの列の構成と保存先を、推奨の案つきで聞いてきた
- Excelを作り、注記を添える:期日の無い1枚を空欄にした理由や、和暦を西暦に直したことを書いた
手順1の画面です。赤枠が、Claudeの添えた理由です。

手順3で出た質問の1つ目です。どの案にも中身の説明が付いています。

答え合わせをしてみると、税込金額・並び順・合計の数式まで、用意した正解と一致しました。かかった時間は、画面を撮る手間を除くと5分足らずです(担当者の体感)。
合計のセルには、数字ではなく数式が入っています(赤枠)。

支払期日の無い1枚については、「取引の条件で決まっているなら手入力で補えるが、PDFからは取得できない」と、人が決める点として返してきました。

一方で、人が確認すべき点も残りました。日付がExcelの日付の値ではなく文字で入っていたため、期日までの日数を数式で数えるなら直す必要があります。
承認の設定は「手動で承認」にしましたが、承認を求められたのはフォルダを渡す時点だけで、Excelを作るときには求められませんでした。フォルダを渡す画面には、このセッションの間、フォルダ内のファイルを読み取り、変更できるようになると書かれています。
渡すフォルダを絞ると、AIが触れるファイルの範囲を絞れます。どの操作を人の承認で止めるかは、これとは別に決めておく必要があります(後の「失敗しないか」の節)。
フォルダを渡す画面には「このタスクはクラウドで実行されるため、Claudeが使用するファイルはお使いのデバイスの外部に送信されます」とあります。どの書類を渡すかは、社内のルールに照らして決めてください。
当方のコラム制作では、AIエージェントをどこまで使っているのか
当方自身も、このコラムの制作にAIエージェントの仕組みを使っています。ネタ出しから下調べ、下書きの作成までは、複数の役割を持つAIが順番に進めます。要所ごとに当方が内容を確認してから、次の工程に進める形です。
最後にWebサイトへ公開するかどうかを判断するのは、必ず人です。AIエージェントが自律的に動くのは、人が確認する手前までに限っています。
この仕組みのおかげで、当方はゼロから毎回調べ直すのではなく、AIが用意した材料を確認する作業に多くの時間を使えるようになりました。
AIエージェントを使うと失敗しないか
AI事業者ガイドライン第1.2版は、AIエージェントが自律的に動く分だけ、意図しない操作や攻撃の対象が広がる点に注意を促しています。あわせて、次のような留意事項を挙げています。
- 人が判断する場面を先に決める:AIに任せる操作と、人が承認してから進める操作を分けておく
- 渡す権限を必要な範囲だけに絞る:会社の全データにアクセスできる状態で使わない
- 操作履歴を定期的に確認する:AIが何をしたかを、あとから追える仕組みにしておく
請求書の実例では、フォルダの中でファイルを読み、Excelを作るところまでは、フォルダを渡すときの許可で進みました。一方でCoworkは、ファイルを完全に削除する前には、はっきりした許可を求めてきます(Anthropic公式ヘルプ、2026年9月時点)。
取引先へのメール送信やWebへの公開のように、外に出て取り消しにくい操作は、人が承認してから進める側に置きます。当方のコラム制作で公開を人に残しているのも、このためです。
任せる範囲を一気に広げず、金額や対象を区切った小さな業務から始めれば、リスクを抑えながら効果を確かめられます。
導入の手順
-
洗い出す:いま使っているAIツールで、1回の指示では終わらない作業を書き出す
-
業務を1つ選ぶ:「入力→確認→次の作業」と複数ステップに分かれている業務を1つに絞る
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境界を先に決める:AIエージェントに任せる範囲と、人が確認する場面を先に決めておく
-
小さく試す:1〜2週間、AIが下書きや作業案を作るところまでを人が毎回確認する
-
範囲を広げる:決めた範囲を守れたか、例外は人に判断を戻せたかを確認してから、次に任せる範囲を決める
FAQ
一部は無料で試せます。ChatGPTでは、複数の手順がある作業に向く「ChatGPT Work」が無料プランでも使えます。ただしデスクトップアプリに限られ、制限もあります(OpenAI公式の料金ページ、2026年9月時点)。
有料の個人向けプラン(Plus)なら、デスクトップ・Web・スマホで使えます。有料プランは1人あたりの月額なので、使う人数によっても費用が変わります。
上で試したClaude デスクトップの「Cowork」は、有料プランで使えます(Anthropic公式ヘルプ、2026年9月時点)。
会計ソフトのように、すでに契約しているサービスにAIエージェントの機能が加わる例もあります。手元の契約内容を先に確かめておくと、余計な出費を避けられます。
最初の一歩は、いま使っているAIツールの中でエージェント機能を試すだけで踏み出せます。プログラムを書く知識そのものは、AIエージェントに任せられる部分です。初めから複雑な仕組みを組む必要はありません。
任せる範囲は、導入する会社の側で決めます。AI事業者ガイドラインも、人が判断する場面を残すことを留意事項に挙げています。何をAIに任せ、どの操作で人の承認を待つかを、始める前に書き出しておきます。
- AIエージェントは、AIが複数の作業を自分でつなげて実行する仕組みで、総務省・経済産業省のガイドラインでも「自律的に行動するAIシステム」と定義されている
- 生成AIとの違いは、次の作業を誰が判断して進めるかにある。AIエージェントは、それを自分で判断してつなげる
- 任せてよいのは、繰り返しの多い業務から。プログラムには計算や仕分けの作業、AIエージェントには判断の下書きと橋渡し、人には最終決定を置く
- 会計や税理士業務のソフトにもAIエージェントが加わり始めており、下書きの承認や確度の低い記帳の確認など、人に戻す場面が機能ごとに決められている
- 使うときは、人が確認する場面と、AIエージェントに渡すフォルダや権限の範囲を先に決めておく
いま使っているAIツールに、複数ステップの業務を1つだけ任せてみる。最初は、AIが作業を進めるところまでを人がすべて確認しながら試す。
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