機械の稼働や温度をグラフで見る|小さく始めるIoT

機械の稼働や温度をグラフで見る|小さく始めるIoT AI活用の記事
結論

センサで機械の稼働や温度を自動で記録し、離れた場所からグラフで見て、改善に生かせる

機械やセンサをネットにつないで状態を自動で集める仕組みを、IoT(モノのインターネット)と呼びます。大がかりな設備を入れる前に、小さく試すのに使えるのがRaspberry PiやArduinoです。

  • Raspberry Pi:手のひらサイズの小型コンピュータ
  • Arduino:小型のコントローラー(機器を動かすための小さな基板)
  • どちらも、センサやモーターをつないでプログラムで制御できる
費用感
数千円〜(マイコンボード+センサ+無料クラウドサービス、機器は要見積り)
最初の一歩
1台の設備の稼働時間だけを1週間記録してみる

社長が最初に知りたい5つの問い

IoT導入の判断は「うちでもできるか」「いくらか」「何からか」「失敗しないか」「誰がやるか」の5つに集約されます。

問い ①

中小製造業でもIoT機器は使えるか

新潟県の事例では、スマートフォンとRaspberry Piを使って機械の動作情報を集めた結果、段取り替えや生産手法の改善につながったと評価されています。この評価は同県の報告書によるもので、具体的な削減時間や増加率といった数値までは記載されていません。

そのため「どの程度改善したか」の大きさは、後述するIPAの別事例(数値つき)を参考にする方が実感しやすくなります。ただし、既製のマイコンボードとセンサの組み合わせで必要な情報だけを取得する方法は、大企業向けの高額な生産管理システムに比べてハードルが低くなります。中小企業でも取り組みやすい選択肢です。

問い ②

機器は数千円、クラウドは無料の事例がある

機器そのものは安価に始められる事例があります。沖縄県の研究では、Arduino互換機(ESP32)本体が約1,180円で購入できます。ブレッドボードや温度センサー、配線を含めた製作費全体では約4,887円かかっています。Wi-Fi通信機能を持ち、国内の電波法認証も済んでいます。

この価格は研究当時の調査時点のものです。近年は半導体不足や物価上昇(インフレ)の影響で電子部品の価格が上昇傾向にあり、現在購入する場合はこれより高くなっている可能性があります。

クラウド側の費用についても手がかりがあります。ワイヤ製造企業の事例では、Raspberry Pi Zeroとセンサ基板(Enviro PHAT)、無料クラウドサービス(Ambient)を組み合わせています。

社長が最初に知りたい5つの問い

※ 出典の表記は「Raspberry Pi Zero」ですが、無印のZeroはWi-Fi非対応です。クラウドと通信している以上、実際にはZero WやZero 2 Wなど無線対応モデルの可能性があります。

無料クラウドを使っている以上、月額のクラウド利用料は抑えられる可能性がありますが、出典に具体的なランニングコストの記載はありません。

下の表は、実際の事例で使われた機器と、費用が確認できる範囲の目安です。金額の記載がある項目とない項目が混在しています。監視用マイコン一式のように出典に金額の記載がない項目は、購入前に販売店やメーカーへの見積りを取ることをおすすめします。

項目 内容 費用の根拠
センサ機器(1台分) Arduino互換機(ESP32)本体+ブレッドボード・温度センサー・配線一式 合計 約4,887円(本体約1,180円・沖縄県研究、調査当時)
監視用マイコン一式 Raspberry Pi Zero+センサ基板 出典に金額の記載なし・要見積り
クラウド 無料クラウドサービス(Ambient) 無料(出典記載)
問い ③

まず1台・1つの数値から始める

最初から工場全体をつなごうとしないことが定着への近道になります。多くの現場では、1台の設備・1つの数値(稼働時間、温度、振動など)から始めています。

産総研のスマート製造ツールキットでは、Arduino(IOモジュール)を使った自作センシング機器を紹介しています。電流・加速度・距離・明るさ・圧力・スイッチなど、さまざまな入力に対応できるとされています。測定対象の種類が豊富にある以上、自社が「何を測りたいか」を先に決めておかないと機器選定で迷いやすくなります。

問い ④

センサを付けただけで終わらせない対処法

注意:センサを付けただけで満足し、データを見る仕組みや改善につなげる担当を決めないまま終わるケースは避ける必要があります。

データを取得しても、誰かが定期的に見て現場の改善行動に落とし込まなければ数値が積み上がるだけで終わります。ワイヤ製造企業の事例では、クラウド側で自動グラフ化する仕組みまで含めて構築しており、見る仕組みまでセットで用意している点が参考になります。

失敗を避けるための対処法は次の3点です。

  • 導入前に「誰が」「いつ(毎日・週1回など)」データを見るかを決める
  • 最初の1〜2週間は担当者と社長の両方でグラフを確認する時間を作る
  • 数値に変化が出た場合の報告ルートをあらかじめ決めておく

この3点を導入前に紙一枚でまとめておくと、データを取っただけで終わる事態を防ぎやすくなります。

問い ⑤

社内の担当者で対応できるか

最初の小規模な導入であれば、社内の電気・設備に詳しい担当者や、簡単なPythonが書ける担当者で対応できる場合があります。ワイヤ製造企業の事例でも、Pythonでセンサ値を取得しクラウドにアップロードする仕組みが使われています。

社内に対応できる人材がいない場合は、外部の専門家に最初の設計だけを依頼し、運用は社内で行う進め方も選択肢になります。

IoT導入でどんな効果が見込めるか

IoT導入でどのような効果が見込めるかを示す数値です。この数値はIPAの地域IoT事例(前章の新潟県事例やワイヤ製造企業事例とは別の事例)によるものです。

出典では3つの指標を挙げたうえで「以上による大幅な生産性向上を見込む」とまとめられています。

指標 数値 出典の位置づけ
製造リードタイム 5日→4日 IPA地域IoT事例
段取り時間工数 17%低減 IPA地域IoT事例
生産数 10%増加 IPA地域IoT事例

この3つの指標は、出典では「見込む」効果として位置づけられており、確定した実績として書かれているわけではありません。出典には因果関係の詳細までは記載されておらず、なぜ同時に挙げられているのかは断定できません。

この数値はIPA事例に固有のものであり、前章の新潟県事例やワイヤ製造企業事例の成果ではない点も誤解しないよう注意してください。

経済産業省の調べでも、デジタル技術導入で効果が出た項目のうち最も多かったのは「生産性の向上」で55.6%でした。

どの機器を選ぶべきか

自社が何を測りたいかによって、選ぶべき機器とクラウドの組み合わせは変わります。以下は用途別の導入例です。

用途 機器の組み合わせ 特徴
拠点間で稼働状況を共有したい Raspberry Pi Zero+センサ基板+無料クラウド 本社と工場の情報共有に実績あり(ワイヤ製造企業の事例)
電流・振動・圧力など複数種類のセンサを自作したい Arduino(IOモジュール) 電流・加速度・距離・明るさ・圧力・スイッチなど多様な入力に対応
温度を低コストで測定したい Arduino互換機(ESP32) 本体約1,180円・製作費合計約4,887円、Wi-Fi通信、電波法認証済み(調査当時)

表の各行は、それぞれ別の事例で使われた組み合わせです。拠点をまたぐ共有が必要か、測りたい対象が温度のような単純な数値か、複数種類の入力かを整理すると、参考にする事例を絞り込みやすくなります。

実際の導入事例に見る現場改善のやり方

ワイヤ製造企業のRaspberry Pi監視システム

ワイヤ製造企業では、令和元年からRaspberry Piとクラウドを利用した監視システムを構築しています。生産設備の稼働状況を把握するとともに、東京本社と岩手工場の間で情報を共有する目的で導入されました。

Raspberry Pi Zero、センサ基板(Enviro PHAT)、無料クラウド(Ambient)を利用し、Pythonでセンサ値を取得・アップロードし、クラウド側で自動グラフ化している。
出典: AIST(産総研)研究会資料

この事例が示すのは、拠点が離れていても安価な機器とクラウドの組み合わせで情報共有ができるという点です。本社の担当者がグラフを見るだけで工場の稼働状況を把握できる仕組みは、頻繁な出張や電話確認を減らす効果も期待できます。

実際の導入事例に見る現場改善のやり方

沖縄県のArduino互換機による温度センサー製作

沖縄県の研究では、Arduino互換機(ESP32)を用いたIoT温度センサーが製作されています。

マイコン本体の価格は調査当時で約1,180円、ブレッドボードや温度センサー、配線を含めた製作費全体では約4,887円でした。Wi-Fi通信機能を持ち、国内の電波法認証も済んでいる点が特徴です。

この事例では、プログラムや電子工作を初めて扱う参加者が多く、ハンズオン形式の研究会で学びながらセンサを製作しています。専門知識がなくても、学びながら形にできることを示す事例です。

温度以外の項目でも、同様に安価なセンサで代替できる場合があります。ただし価格は調査時点のものであり、最新の実勢価格は購入前に確認することをおすすめします。

知識がなくても動くものは作れるか|当方も試してみた

1試作ならブレッドボードで十分
2本格稼働ならはんだ付けがおすすめ

当方の担当者も、Raspberry PiとArduino互換機(ESP32)を使い、生成AIに手伝ってもらいながら2つの仕組みを個人で作りました。どちらも今は日常的に使っています。

1つ目は、外出先からスマートフォンでエアコンを操作する仕組みです。Raspberry Pi 3 Model Bに赤外線を出す部品を付け、専用アプリからON/OFFや温度設定を送ります。

回路の設計もアプリのコード作成も、生成AIと一緒に進めました。

Raspberry Piと赤外線送信回路をブレッドボードで組んだところ

エアコン遠隔操作アプリの画面

2つ目は、持ち物のチェックが全部終わらないと蓋が開かない箱です。Arduino互換機(ESP32)とモーターを組み合わせ、スマートフォンのアプリでチェックリストを操作します。

こちらも設計・製作を生成AIと一緒に進めました。モーターの電源に乾電池を使ったところ、3週間ほどで電池切れを起こすようになりました。

電源のまわりを作り直し、いまは問題なく動いています。

ESP32とサーボモーター、乾電池ボックスをブレッドボードで組んだところ

忘れ物チェックアプリの画面

2つとも、部品を差し込むだけで配線できる「ブレッドボード」という板の上で組んでいます。はんだ付けは1回もしていません。

試作としてまず動くか確かめる段階なら、これで十分です。生成AIに手伝ってもらいながらでも、電子工作の経験がなくても形にできます。

ただし、工場の設備として本格的に稼働させるなら話が別です。ブレッドボードの配線は振動や経年で抜けやすいため、はんだ付けで配線をしっかり固定することをおすすめします。

部品を組み合わせて動くものを作ること自体は、生成AIの助けを借りればそれほど難しくありません。難しいのは、実際に動かし続けてから見えてくる部分です。

乾電池での電源供給は、組み立てた直後の動作確認では問題になりませんでした。日常的に使い始めて、初めて電池切れの早さが分かりました。

生産現場に設備を後付けする場合も、同じことが起こり得ます。近くの電源から常時給電できるか、それとも電池やバッテリーで動かすのか決めておく必要があります。

バッテリーなら、どのくらいの頻度で交換や充電が必要になるかまで含めて、動かす前に確認しておくと後戻りが少なくなります。

集めたデータをAIで活かせるか(出典にない一般論として)

ここから先は、今回参照した出典に記載のある事実ではなく、IoTデータの活用として一般に検討できる方向性の話です。ワイヤ製造企業の事例ではクラウド側で自動グラフ化する仕組みまで構築されていますが、それをAIで分析した実例は出典にはありません。

仕組みとして考えられるのは、日々記録した稼働時間や温度のデータをAIチャットツールに読み込ませる使い方です。「先週と比べて数値がどう変化しているか」を要約させます。専門的な分析知識がなくても試しやすい方法です。

AIに読み込ませるデータには、取引先情報や個人情報が混在しないよう注意が必要です。事前にセンサで取得する項目を稼働時間・温度など機械的な数値に絞っておくと、リスクを抑えながら試しやすくなります。

→ くわしくは「機密データをAIに渡すと危ない?|ECの3段階運用」で解説しています。

【番号つきステップ】自社でIoT監視を試す最初の一歩

測りたい項目を1つだけ決める

稼働時間・温度・振動など、まず1項目に絞ります。

対象の設備を1台だけ選ぶ

工場全体ではなく、ボトルネックになっている設備や、段取り替えが多い設備を選びます。

安価なマイコンボードとセンサを用意する

Raspberry PiやArduino互換機と、対応するセンサ基板を選定します。機器代金は前述の表を参考に見積もります。

無料または低額のクラウドサービスと連携する

センサ値をアップロードし、自動でグラフ化できる仕組みを用意します。

1〜2週間データを記録し、見る担当を決める

データを取るだけでなく、誰が定期的に確認し改善案を出すかを最初に決めておきます。

改善策を1つ実行し、数値の変化を確認する

段取り時間や稼働率の変化を見て、効果があれば対象設備を広げていきます。

FAQ

Raspberry PiやArduinoの知識がない社員しかいませんが導入できますか?

A. 既存の事例を参考にすれば、社内対応できる場合があります。 ワイヤ製造企業の事例ではPythonでセンサ値を取得する仕組みが使われており、基本的なプログラミングの知識があれば対応可能です。前述の通り、当方の担当者も生成AIの力を借りて同様の仕組みを個人で作った経験があります。最初の設計だけ外部の専門家に依頼し、日々の運用は社内で行う進め方も選べます。

センサを付けただけで効果は出ますか?

A. センサを付けるだけでは不十分で、データを見て改善行動につなげる仕組みが必要です。 IPAの地域IoT事例では、段取り時間工数の17%低減や生産数10%増加が挙げられています。データを基にした段取り・生産手法の見直しが、大幅な生産性向上につながるとされています。誰が・いつ・どうデータを確認するかを、導入前に決めておくことが重要です。

集めたデータをAIで分析することはできますか?

A. 稼働時間や温度などの数値データであれば、AIに読み込ませて傾向を分析させる使い方が考えられます。 今回参照した出典にAI分析の実例記載はなく、あくまで検討できる方向性の一つです。自社の設備データをAIでどう活かせるか整理したい場合は、当方(ゲンバAI)へ無料でご相談いただけます。

どのくらいの期間で効果を確認できますか?

A. 今回参照した事例には、効果が見えるまでの具体的な期間の記載はありません。 そのため一律の目安は示せませんが、まずは1〜2週間ほど数値を継続して記録し、変化の傾向をつかむところから始める進め方が現実的です。

まとめ

  • Raspberry PiやArduinoといった数千円規模の機器で、生産現場のIoT化は小さく始められる
  • 中小製造業の現場で、段取り時間の削減や生産数の増加が見込めるとする事例がある
  • センサを付けるだけでなく、データを見る担当と改善のサイクルを決めておくことが効果につながる
  • 電子工作の知識がなくても、生成AIの力を借りれば当方の担当者でも動くものを個人で作れた
  • 常時給電かバッテリーかという電源の確保も、動かす前に検討しておく

次の一歩1台の設備の稼働時間だけを1週間記録してみる。

小さく1台から試し、効果を確認しながら対象を広げていくやり方であれば、多くの中小企業でも無理なく取り組めます。自社の業務に合わせたAIツールの選定・導入は、ぜひ、ジッソウLABのゲンバAIへ無料でご相談ください。

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