デジタル化・AI導入補助金は最大450万円、補助率は原則1/2
IT導入補助金は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変わり、補助額の上限は最大450万円です。補助率は通常枠で原則1/2、インボイス枠の補助額50万円以下の部分では小規模事業者が最大4/5になります。
申請は自社単独ではできず、事務局に登録された支援事業者と組む前提です。
申請の入口|どこで手続きし、どこに聞くか
手続きはすべて事務局の公式サイトから始まります。制度の名前が変わったばかりで検索結果に古いページが混ざるため、最初に開く場所をまとめます。
| やること | 行き先 |
|---|---|
| 制度の中身と公募要領を読む | デジタル化・AI導入補助金2026(事務局) |
| GビズIDプライムを取る | GビズID |
| SECURITY ACTIONを宣言する | SECURITY ACTION(IPA) |
| 支援事業者とITツールを探す | ITツール・IT導入支援事業者検索 |
| 交付申請を出す | 申請マイページ |
分からないことは事務局のコールセンターで聞けます。電話は0570-666-376です(IP電話などからは050-3133-3272)。受付は9時30分から17時30分まで、土曜・日曜・祝日と年末年始は休みです。締切の前日と当日は混み合います。
申請マイページは自分で登録する場所ではありません。支援事業者を決め、そこから招待を受けて初めて入れます。先にアカウントだけ作ろうとしても進みません。
IT導入補助金は2026年度から名前も中身も変わった
長く「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度は、2026年度から名称が「デジタル化・AI導入補助金」に変わりました。令和7年度補正予算にもとづく再整理で、中小企業の業務のやり方を変えることやAIの活用も見据えた支援制度として組み直されています。
名前が変わったことで、検索しても古い情報にたどり着きやすい時期です。ネット上の解説記事や、取引先から聞いた話が旧名称のままなら、金額や要件が現在のものと違う可能性があります。
制度名が変わったため、2026年8月時点で調べるなら「デジタル化・AI導入補助金」で確認する。
読者の実務で意味があるのは、名称変更と同時に2回目以降の申請の条件が厳しくなった点です。過去にIT導入補助金を使った事業者が再度申請する場合、3年間の事業計画の策定と賃上げ計画の表明が必須になったと報じられています。要件を達成できなかったり報告をしなかったりすると、補助金の一部または全額を返すことになる可能性があります。初回の申請と同じ感覚で2回目に臨むと、あとから負担が残る形になります。
補助額はいくらか|業務プロセスの数で上限が変わる
通常枠の補助額の上限は、導入するITツールがカバーする業務プロセスの数で決まります。何本の業務を一度に変えるかで、上限の段が変わる仕組みです。
次の表は、通常枠の業務プロセス数と補助額の関係を比べたものです。
| 業務プロセス数 | 補助額の下限 | 補助額の上限 |
|---|---|---|
| 1〜3つ | 5万円 | 150万円 |
| 4つ以上 | 150万円 | 450万円 |
表の読み方は単純で、業務プロセスが3つまでなら上限150万円、4つ以上に広げると上限450万円になります。ここでいう業務プロセスは、受注・在庫・請求といった業務の単位を指します。
自社に当てはめるときは、金額の大きさに引っ張られないほうが安全です。上限450万円を取りに行くには、4つ以上の業務を同時に変えることになります。受注・在庫・請求など4つ以上を一度に切り替えれば、現場は同時に4つ以上の新しい手順を覚えることになり、稼働のあとに混乱が集中します。まず1〜3つの枠で足元の業務を変え、動いてから広げるほうが、結果として使い切れる金額は大きくなります。
補助率は誰がいくら戻るか|小規模事業者は最大4/5
補助額の上限とは別に、実際に何割が戻るかを決めるのが補助率です。ここは事業者の条件と申請する枠で変わります。
次の表は、枠ごとの補助率をまとめたものです。
| 枠・条件 | 対象 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 中小企業 | 原則1/2 |
| 通常枠(最低賃金近傍の事業者) | 条件を満たす中小企業 | 最大2/3 |
| インボイス枠(補助額50万円以下の部分) | 小規模事業者 | 最大4/5 |
| インボイス枠(補助額50万円以下の部分) | 中小企業 | 最大3/4 |
| インボイス枠(50万円超の部分) | 中小企業・小規模事業者 | 2/3 |
表のなかで自己負担がいちばん軽いのは、インボイス枠の小規模事業者で補助率4/5です。50万円のソフトを入れた場合、自己負担は10万円という計算になります。ただし50万円を超えた部分の補助率は2/3に下がるため、金額が大きいほど平均の負担率は上がっていきます。
通常枠の補助率が2/3に上がる「最低賃金近傍の事業者」には、細かい定義があります。判定に使うのは過去の実績で、次の4つをすべて満たしていた事業者が該当します。
- 対象期間:2024年10月から2025年9月まで
- 賃金帯:その期間の地域別最低賃金以上、かつ令和7年度改定の地域別最低賃金未満
- 従業員割合:その賃金帯で雇用していた従業員が全従業員の30%以上
- 該当月数:その状態の月が3か月以上ある
対象期間はすでに終わっているため、これから賃金を動かして条件を満たすことはできません。その代わり、給与台帳をさかのぼれば申請前に自社で判定できます。支援事業者に相談する段階で賃金の分布を確認しておくと話が早く進みます。
自社は対象に入るか|資本金と従業員数の上限
補助の対象は主に中小企業・小規模事業者・個人事業主で、業種ごとに資本金または従業員数の上限が決められています。
次の表は、公表されている業種別の目安のうち代表的なものです。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
条件は「資本金以下」または「従業員数以下」のどちらかを満たせばよい形です。従業員が数名の会社であれば、まず外れることはありません。個人事業主も対象に含まれます。
例外として、インボイス枠のうち電子取引類型では大企業も補助対象に含まれます。取引先の大企業と一緒に電子取引の仕組みを整えるような場面が想定されている類型です。自社が中小企業であっても、相手側が対象に入れるかどうかで進め方が変わることがあります。
何に使えて、何に使えないか|ソフト代は対象、ハードは通常枠で対象外
補助の対象になる経費は、ソフトウェアの購入費、クラウドの利用料(最大2年分)、導入関連費です。導入関連費には、保守サポートやマニュアルの作成といったサポート費用、導入後の活用を支援する費用が含まれます。
通常枠ではハードウェアの購入費は対象外です。パソコン・タブレット・ハンディターミナルの本体代は、補助金では見てもらえない前提で予算を組む必要があります。
ここは見落とすと計画が崩れる部分です。当方の自社導入事例では、バーコード検品用のハンディターミナル端末は、出荷検品だけに使う場合で1台あたり15万〜20万円、入荷から棚卸まで終日使う場合で20万〜30万円かかりました。端末を5台そろえれば、それだけで100万円前後の支出になります。この部分が補助の対象外だとすると、ソフト側だけで予算を考えていた会社は資金計画をやり直すことになります。
一方で、クラウドの利用料が最大2年分まで対象になるのは実務的に大きい点です。月額のサービスは初期費用が小さいかわりにランニングが続きますが、その立ち上がりの2年分を補助の対象にできるため、月額型のツールとは相性がよい制度と言えます。
申請から入金までの順番|後払いなので先に買うと対象外
この制度でいちばん事故が起きやすいのが、お金の流れる順番です。補助金は先にもらえるものではなく、導入して支払いを終え、実績を報告したあとに入金されます。
GビズIDプライムを取得する
法人の行政手続きで使う共通のアカウントです。申請の前提になるため、最初に着手します。発行までおおむね2週間かかります。
SECURITY ACTIONを宣言する
情報セキュリティ対策に取り組むことを自ら宣言する制度で、申請の要件になっています。★一つ星か★★二つ星のどちらかを宣言し、交付申請のときに宣言済アカウントIDを入力します。IDの発行はおおむね2〜3日です。
IT導入支援事業者を選ぶ
申請は自社単独では完結しません。補助金事務局に登録された支援事業者と組んで進めるのが前提です。導入したいツールを扱っている事業者かどうかを先に確認します。
交付申請を出し、交付決定を待つ
支援事業者から申請マイページへ招待を受け、必要な情報の入力と書類の添付を済ませて事務局へ提出します。審査を通ると交付決定が出ます。交付決定の前に導入・支払いをすると、補助を受け取れない可能性があります。
導入して支払い、実績を報告する
交付決定のあとにツールを導入し、代金を支払います。その後、事業実績報告を提出します。
確定検査を経て入金される
実績報告の確定検査を通過してから補助金が振り込まれます。実績報告を怠ると受け取れない可能性があります。
この順番から分かることは2つあります。ひとつは、いったん全額を自社で立て替える資金が要るということ。もうひとつは、良いツールを見つけても交付決定が出るまでは契約や支払いを止めておく必要があるということです。「早く導入したい」という現場の勢いと、この制度の順番は真逆を向いています。
先に導入したい事情があるなら、補助金を使わない判断も選択肢になります。補助を待って3か月遅れることの損失と、補助で戻る金額を並べて比べてから決めるほうが現実的です。
どの枠を狙うかの判断
枠の選び方を、2つの分かれ道で整理した判断フローです。
図:目的と規模から枠を選ぶ判断フロー
この判断フローは、最初に「インボイス対応が目的か、業務全体の効率化が目的か」で分かれます。インボイス対応が目的で自社が小規模事業者なら、補助額50万円以下の部分で補助率が最大4/5になるため、自己負担がいちばん軽くなります。
業務全体の効率化が目的の場合は、変える業務プロセスの数で上限が分かれます。自社がどちらに当てはまるかは、導入したいソフトが請求書の発行や受領に関わるものかどうかで、おおむね判断がつきます。なお通常枠でも、最低賃金近傍の事業者の条件を満たせば補助率は2/3まで上がるため、給与の実態も合わせて確認してください。
締切はいつか|第4次は8月25日、第5次以降は未公表
2026年度の公募は年度を通して複数回に分けて実施されます。締切ごとに交付決定の日程が決まっており、そこから逆算して動くことになります。
| 回 | 締切 | 交付決定 |
|---|---|---|
| 第4次 | 2026年8月25日(火)17:00 | 2026年10月7日(水)予定 |
| 第5次・第6次 | 未公表 | 未公表 |
本記事の公開日である2026年8月25日は第4次の締切当日にあたるため、これから準備を始める会社は第5次以降を狙うことになります。ただし公式の事業スケジュールでは、第5次と第6次は枠が置かれているだけで日付が入っていません。「確定している募集回のスケジュールのみ公表しております」と注記されています。第5次を2026年9月29日(火)とする解説記事もありますが、2026年8月25日時点で公式サイトを確認した限り、その日付は掲載されていませんでした。
目安は前年度から立てられます。前年度のIT導入補助金2025は通常枠で年度内に8回の公募があり、交付決定はおおむね1か月おきに出ていました。同じペースで進むなら、第5次の締切は9月下旬から10月上旬あたりに置かれる見込みです。日付が公表されてから動くと準備が間に合わないため、GビズIDプライムとSECURITY ACTIONだけは先に済ませておくのが安全です。
第4次の例では、締切から交付決定まで約6週間あります。第5次でも同程度の期間を見込むなら、交付決定は11月前後になる計算です。導入と支払いはそのあと、入金はさらに実績報告と確定検査を経てからになります。年内に補助金が手元に入る想定で資金繰りを組むと、ずれる可能性が高い日程です。
補助金より先に決めておくこと|データの形をそろえる
補助金の枠と金額が分かると、次はツール選びに気持ちが向きます。ただ、当方自身が在庫管理と需要予測に取り組んだ経験では、つまずくのはツール選びではなくその前のデータでした。
複数の店舗や部署がある現場では、在庫と発注という一番大事なデータがばらばらの形で置かれています。各拠点で管理の仕方が違い、項目名も単位も違う。電子データもあれば、紙のまま残っているものもある。この状態のまま新しいツールを入れても、集計も予測もできません。
これを1つにまとめる作業が第一段階で、当方の体感ではプログラムを組んでシステム化するよりも大変でした。表記のゆれ・重複・欠けが多いと、整えるだけで数週間かかることもあります。ツールは買えば手に入りますが、データの揃え方は買えません。
紙をスキャンして画像にしただけでは使えません。決まった形に並べ直し、後から検索・集計できる状態にして初めて動きます。
もうひとつ大事なのは、現場の担当者だけでは終わらない点です。「うちはこの形でデータをまとめる」という会社全体としての意思が要ります。店舗ごとに項目名や単位が違うままでは、いくら集めても1つの表になりません。ここは小さく始められる工程ではなく、経営者が決めて号令をかける工程です。
この段階を越えると、正確な予測と、標準化された作業への道が開けます。補助金の申請書に書く「業務プロセス」の中身も、データの形が決まっていなければ具体的に書けません。交付決定を待つ数か月は、この作業に充てるのに適した期間です。
→ くわしくは「生産進捗の遅れをデータに変える|AI化に効く共有表」で解説しています。
つまずきやすい3つの点と対処
手続きの流れを追っただけでは見えない、実際に効いてくる注意点を3つ挙げます。
- 交付決定の前に契約・支払いをしてしまう
交付決定前に導入した場合は補助金を受け取れない可能性があります。導入を急かされても、決定通知が届くまでは発注書にサインしないと決めておきます。 - ハードウェアの費用を予算から抜いてしまう
通常枠ではハードウェア購入費は対象外です。端末やパソコンが必要な計画では、その分は全額自己負担として別枠で確保します。 - 2回目以降の申請で条件が増えたことを知らずに進める
過去にIT導入補助金を利用した事業者は、3年間の事業計画策定と賃上げ計画の表明が必須になったと報じられています。要件を達成できなかったり報告をしなかったりすると、一部または全額を返すことになる可能性があります。申請する前に、3年後まで守れる計画かどうかを社内で確認しておきます。
どれも、事前に知っていれば避けられる種類のつまずきです。特に1つ目は、支援事業者と組む段階で「交付決定はいつ出る見込みか」「それまで契約は保留にできるか」を口頭ではなく書面で確認しておくと、社内でも共有しやすくなります。
2つ目については、ソフトだけで完結する業務から選ぶという回避策があります。クラウドの会計ソフトや受発注ソフトのように、既存のパソコンやスマートフォンで動くものを最初の対象にすれば、対象外のハード費用がそもそも発生しません。端末が必要な現場作業のデジタル化は、その次の段階に回すという順番です。
FAQ
A. 規模の要件で外れることは、まず考えられません。補助対象は中小企業・小規模事業者・個人事業主で、業種ごとの上限は製造業なら従業員300人以下、小売業なら50人以下といった水準です。ただし規模は要件のひとつで、このあとに挙げるGビズIDプライムの取得やSECURITY ACTIONの宣言も必要になります。小規模事業者はインボイス枠で補助率が最大4/5になるため、条件はむしろ有利な側です。
A. 先にはもらえません。交付申請の審査と、事業実績報告の確定検査を通過したあとに入金されます。つまりツールの代金はいったん自社で全額を支払う必要があります。
A. 自社単独では完結しません。補助金事務局に登録されたIT導入支援事業者と連携して進めるのが前提です。加えてGビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言が必要になります。導入したいツールを扱っている支援事業者を先に探すと、その後の手続きを案内してもらえます。
A. 通常枠ではハードウェア購入費は対象外です。対象になるのはソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、保守サポートやマニュアル作成などの導入関連費です。手持ちの端末で動くクラウドサービスから始めれば、対象外の支出を抱え込まずに済みます。
A. GビズIDプライムの取得から始めてください。発行におおむね2週間かかり、これが無いと申請そのものができないためです。並行して、変えたい業務のデータが今どの形で残っているかを確認しておくと、申請書に書く業務プロセスの中身が具体的になります。どの業務から手をつけるかの整理から一緒に進めたい場合は、ジッソウLABのゲンバAIにご相談ください。
A. 2回目以降も申請できますが、2026年の新制度では3年間の事業計画策定と賃上げ計画の表明が必須になったと報じられています。要件を達成できなかった場合や報告をしなかった場合、補助金の一部または全額を返還する可能性があります。申請前に、3年後まで守れる計画かどうかを社内で確認しておくことをおすすめします。
- IT導入補助金は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わり、補助額の上限は最大450万円になった。
- 通常枠の補助額は、業務プロセスが1〜3つで5万〜150万円、4つ以上で150万〜450万円。補助率は原則1/2で、最低賃金近傍の事業者は最大2/3。
- インボイス枠では、補助額50万円以下の部分について小規模事業者の補助率が最大4/5、中小企業が最大3/4になる。
- 補助金は後払いで、交付決定の前に導入・支払いをすると受け取れない可能性がある。実績報告と確定検査を経てから入金される。
- 通常枠ではハードウェア購入費が対象外のため、端末が必要な計画は全額自己負担の予算を別に確保する。
GビズIDプライムの取得手続きを今週中に始める。
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