稼働報告はLINEで配ったGoogleフォームに入れてもらい、スプレッドシートで数える
報告を集める場所(LINE)と、数える場所(スプレッドシート)をつなぐと、LINEやメール、紙から集計表へ書き写す転記が消えます。
煩雑な派遣業界の月末処理
一般的に月末はどの業界でも事務処理が煩雑になります。人材派遣業を例にとると、作業量そのものより「情報の置き場所がばらばらであること」に起因することが多いようです。スタッフからの報告がLINEのトーク、メール、紙の勤務表、電話メモに散っていると、事務は最初に全部を1か所へ書き写す作業から始めなければなりません。
この書き写しは、ミスが起きやすいうえに、やり直しがきかない時間帯に集中します。締め日から請求日までの数日に、20名分でも30名分でも同じ作業をまとめて処理することになるためです。
LINE公式アカウントは、スタッフへ一斉に連絡できる点では便利ですが、標準の機能ではフォームを作れず、回答を自動で保存することもできません。つまり、LINEだけで完結させようとすると、トークを1件ずつ開いて読む作業が必ず残ります。
LINE公式アカウントの標準機能では、フォーム作成機能がなく、回答の自動保存もできないが、Googleフォームを連携すれば回答の自動保存が可能となる。
スタッフに新しいアプリを入れてもらう必要はありません。すでに使っているLINEから、フォームのURLを開いてもらうだけで報告の形が変わります。
LINE配信+Googleフォーム+スプレッドシートの3点だけで組める
仕組みは3つの道具でできています。それぞれ何を担当するかを先に押さえると、後の手順が迷いません。
下の表は、3つの道具の役割と、それぞれで何をしないかを整理したものです。
| 道具 | 役割 | やらせないこと |
|---|---|---|
| LINE公式アカウント | 締め日にフォームのURLを配信し、スタッフに報告を促す | 報告内容を読む・保存する |
| Googleフォーム | 稼働日・時間・現場名などを決まった形で受け取る | 集計・請求金額の計算 |
| スプレッドシート | 回答を1行ずつ受け取り、集計シートで数える | スタッフへの連絡 |
表のとおり、LINEは「呼びかけ」だけを担当します。報告の中身を読み取るのはフォームとスプレッドシートの仕事です。この分け方をしておくと、報告が増えてもLINEのトーク画面を追いかける必要がなくなります。
Googleフォームは、ラジオボタン、プルダウン、自由記述、チェックボックス、目盛り式、グリッドといった回答形式を無料で使えます。稼働報告なら「現場名はプルダウン」「稼働時間は数値の自由記述」「特記事項は自由記述」のように、選ぶだけで済む形に寄せると、スマホからの入力が数十秒で終わります。
そして、Googleフォームをスプレッドシートにリンクしておくと、以後フォームに回答が送信されるたびに、リンクしたスプレッドシートへ新しい行が自動追加されます。事務側が何もしなくても、報告が届いた順に表が伸びていく状態になります。
→ くわしくは「少人数の在庫表はスプレッドシート|利点と限界」で解説しています。
作り方は5ステップ|まずはスタッフ10名分から
全スタッフを一度に切り替えると、報告の来ない人を追いかける作業が増えて、かえって月末が重くなります。最初は現場が1〜2か所、人数10名程度の範囲で1か月だけ回してみるのが安全です。
報告フォームの項目を決める
請求と給与に必要な項目だけを紙に書き出します。目安は5つ以内です。
項目を増やすほど入力が面倒になり、報告が来なくなります。「あったら便利」は入れず、請求書と給与計算に必要なものだけに絞ります。
Googleフォームを作る
Googleフォームは無料で、項目を自由に設定できます。ステップ1で決めた項目をそのまま作ります。
設定で注意する点は2つです。1つは、同じ人が月に何度も回答するので「1人1回の回答」に制限しないこと。もう1つは、送信後に「同じ形式でもう一度回答する」リンクを表示させることです。1回の回答は1日分とし、送信したあと続けて次の日分を入れられるようにします。
スプレッドシートに連携する
フォームの回答タブから、回答先のスプレッドシートを作成します。連携すると、1行目に質問項目、2行目以降に各回答が記録され、通常A列には回答日時を示すタイムスタンプが入ります。
このタイムスタンプは、後から「誰がいつ出したか」を確かめるときに効きます。締め日を過ぎた報告を見分ける手がかりにもなるので、消さずに残しておきます。
集計シートを別に作る
ここが一番大事な工程です。フォームが書き込む「フォームの回答」シートは触らず、別に「集計」シートを作って数式やピボットテーブルで参照します。
フォームの回答シートを直接いじると、新しい回答が入ったときに行がずれたり、数式が壊れたりします。回答シートは原本として保管し、集計は別シートでやる。この分け方だけで、運用中のトラブルがかなり減ります。
集計シートでは、スタッフ別の合計時間、現場別の合計時間、日別の一覧など、請求書と給与計算に使う形に整えます。
LINE公式アカウントでURLを配信する
完成したフォームのURLを、LINE公式アカウントの配信に載せます。リッチメニュー(トーク画面の下に固定表示されるボタン)に置いておくと、スタッフは思い出したときにいつでも開けます。
配信のタイミングは、締め日当日の朝ではなく、締め日の2〜3日前から複数回に分けるほうが集まりが良くなります。当日にまとめて呼びかけると、返ってくる時間帯も当日夜に集中してしまうためです。
なお、配る経路はLINEでなくても構いません。当方が支援した現場に、美術関係の学校などへモデルを派遣する事務所があります。そこでは、登録しているスタッフへGmailで事前に案内を送り、Googleフォームで交通費を申請してもらう形を運用しています。回答はスプレッドシートへ自動で記録され、集計はGAS(Google Apps Script/Googleのサービスを動かす無料のプログラム機能)で行っています。この記事の仕組みと同じ形で、配る経路にメールを選んだという違いだけです。
大事なのは配る経路ではなく、受け取る形をフォームに揃えることです。スタッフが日ごろ確実に開くほうを選んでください。
フォームのURLは長いので、LINEのメッセージ本文にそのまま貼るのではなく、ボタンやリッチメニューから開く形にします。スマホで押しやすい位置に置くだけで提出率が変わります。
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スタッフ名… プルダウンにすると表記ゆれ(山田太郎/山田 太郎)が消える
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稼働日… 日付入力にする
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現場名・派遣先名… プルダウンにする
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始業・終業時刻と休憩時間… 数値で受け取る。始業・終業・休憩は3つに分けて質問を作る
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特記事項… 自由記述。遅刻・早退・現場からの指示をここに集める
未提出のスタッフを月末に探さないための通知のしくみ
手集計をやめても、「出していない人を探す」作業が残ると月末は軽くなりません。まず、集計シートで未提出を見えるようにします。スタッフ名を縦に並べ、その月の報告件数を数式で数えれば、1件も出していない人がひと目で分かります。
ただし、件数で分かるのはそこまでです。10日働いて7日ぶんしか出していない、といった日ごとの抜けは、シフトなど予定と突き合わせないと分かりません。
当方が支援した先ほどの事務所では、この突き合わせから督促までをGASで自動にしています。未提出の人を抜き出し、その人たちだけに督促のメールを送る形です。名簿と回答を見比べて誰に連絡するかを決める作業が、そのまま無くなります。
督促は「全員へもう一度お願いします」と流すより、出していない人だけに送るほうが効きます。全員宛てにすると、出した人は自分に関係ないと判断して読まなくなります。
→ くわしくは「資料回収の催促を自動化|税理士事務所の月次」で解説しています。
集計のあと、明細を一人ずつ配るところまで決めておく
月末に残る作業は、集めて数えるところだけではありません。数え終わったあとに、一人ずつの明細を作って全員へ配る作業が続きます。転記がなくなっても、ここが手作業のままなら締めの日数は短くなりません。
先ほどの事務所では、この「配る」ところまでを仕組みにしています(作ったのは当方です)。下の表は、その仕組みを3つに分けて持つときの分け方です。
| 分けるもの | 中身 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 名簿 | 誰に送るか(氏名と宛先) | クラウドの表に1つだけ置き、処理のたびに取りに行く |
| 明細 | 一人ぶんの中身 | 1人1ファイル。文面はテンプレートを1つだけ持つ |
| 送信 | 実際に送る処理 | 送信専用のアドレスから出し、問い合わせ先を本文に書く |
表のとおり、名簿は1つの表に集めます。送信のたびにこの表から送付先を自動で取ってくるようにすれば、辞めた人の宛先が残り続ける事故が起きません。取り込み用の中間ファイルを使う場合は、作る前に必ず消します。消さずに上書きしようとすると、前回の名簿がそのまま使われることがあるためです。
文面はテンプレートを1つだけ持ち、差し込むのは名前と対象月だけにします。人ごとに文面を持たなければ、案内を1行直したいときに直す場所が1か所で済みます。
待たずに動かす作りにすると、失敗が見えなくなります。当方も最初は送信を投げっぱなしにしていたため、送れていない人がいても手元には何も出ませんでした。終わるまで待って結果を受け取り、1件ずつログに残す形へ変えて、はじめて「誰に届いていないか」が分かるようになりました。
※ パスワードのような設定は、プログラムの中に直接書かず設定ファイルへ出しておくと、変更のたびにプログラムを開かずに済みます。
ここで自動になるのは「できた明細を配る」工程であって、給与計算そのものではありません。計算まで含めて任せたい場合は、次に見る有料のシステムが向きます。
無料の組み合わせで足りる範囲と、有料システムに切り替える目安
Googleフォームとスプレッドシートは無料で使えますが、どこまでやれるかには線があります。下の表は、無料の組み合わせと、有料の派遣管理システムで担当できる範囲を比べたものです。
| やりたいこと | LINE+Googleフォーム | 人材派遣管理システム |
|---|---|---|
| 稼働報告の収集と集計 | できる(無料で作成可能) | できる |
| 給与計算・請求書発行の自動化 | 集計結果を手で渡す必要がある | 勤怠データと連動して自動化できる |
| 採用から契約管理までの一括管理 | 対象外 | 一括で管理できる |
表の右列の人材派遣管理システムは、採用から契約・勤怠・請求までを一括で管理できます。勤怠データと連動して給与計算や請求書発行も自動化できるので、集計より後ろの工程まで一気に任せたい会社向けです。
逆に言えば、月末に時間を取られているのが「集計まで」なら、無料の組み合わせで十分ということです。まず無料で組んで、そのうえで給与計算や請求書作成にまだ時間がかかっているなら、そこで有料システムを検討する順番になります。
フォームで集めた勤怠データを、別の基幹システムへ入れ直している会社もあります。この入れ直しをなくすには、基幹システム側の受け入れ口に合わせた別の仕組みと費用が必要です。今回の範囲からは外して後回しにし、まず集計が安定してから考えるほうが判断を誤りません。
もう1つ、費用で見落としやすいのがLINE側です。無料なのはGoogleフォームとスプレッドシートで、LINE公式アカウントには配信できる通数の上限があります。無料のコミュニケーションプランは月200通までで、通数は「メッセージを送った回数」×「送った友だちの数」で数えます(2026年8月時点)。
締め日の前に3回配信するなら、200÷3で約66名までが無料の範囲という計算です。これを超えるとライトプラン(月5,000円・税別)への変更になります。コミュニケーションプランとライトプランは超過分を買い足せない仕組みなので、上限に当たったらプラン変更しかありません。スタッフ10名で始めるなら月30通なので、当面は気にせず進められます。
費用の見当をつけるときは、金額そのものより次の3つが効きます。スタッフの人数、給与・請求まで自動化するかどうか、既に使っている基幹システムと連携する必要があるかどうか。この3つが小さいほど、無料の組み合わせで長く回せます。
現場でつまずく4つの場所と、先に決めておくこと
仕組みを作っても、運用でつまずく場所はだいたい決まっています。先に決めておくと、切り替えの1か月目が楽になります。
- 報告が来ない人が出る … 締め日の2〜3日前から配信し、集計シートで0件の人を数式で見える化する。追いかけるのは当日ではなく前日
- 同じ日の報告が二重に届く … タイムスタンプと稼働日で並べ替え、重複を集計シート側で弾く。フォームの回答シートは消さない
- 現場名の表記がばらつく … 自由記述をやめてプルダウンにする
- 報告の締め切りが守られない … 締め日を過ぎた回答をどう扱うか(翌月扱いにするか、個別に受けるか)を、切り替え前に文書で決めて配信しておく
4つとも、仕組みの不備ではなく運用の取り決めの問題です。ツールを変えるより先に、この4つの答えを紙1枚に書いておくほうが効きます。
Excelのマクロで勤怠集計を組んでいる会社がスプレッドシートへ移す場合は、書き直しが必要になります。当方の実測では、シートに1つずつ書き込む書き方のままスプレッドシートへ持っていくと処理に時間がかかり、配列でまとめて貼り付ける形に置き換える必要がありました。関数と手入力だけで運用している場合は関係ありません。
FAQ
A. LINEのトークからURLを開いて選択肢を押すだけなので、新しいアプリの追加は不要です。項目をプルダウンと数値入力に寄せておけば、文字入力はほとんど発生しません。
A. フォームの作成と回答の受け取り、スプレッドシートへの自動記録までは無料でできます。ラジオボタン、プルダウン、自由記述、チェックボックス、目盛り式、グリッドなどの回答形式も無料で使えます。有料の検討が必要になるのは、給与計算や請求書発行まで自動化したい段階です。
A. 飛ばせますが、先にメール通知で足りないか確かめてください。Googleフォームの標準機能なら設定1か所で、新しい回答が入るたびにメールが届きます。LINEへ流す場合は、GASとLINE Messaging API(LINEにメッセージを送るための正式な窓口)を組み合わせます。ただし送り先のIDを取るために、Webhook(外部からの連絡を受け取る窓口)を用意する工程が入ります。どちらの場合も、全件を通知すると読まれなくなるので、特記事項に記入がある回答だけ流すなど条件を絞るのがおすすめです。
A. フォームの回答が入るシートには直接手を加えず、原本として残しておくのが基本です。集計は別シートから数式やピボットテーブルで参照する形にすると、回答が増えても壊れにくくなります。すでに壊れている場合は、回答シートから新しい集計シートを作り直すほうが早く復旧できます。
A. できますが、作る工程が入ります。当方が支援した事務所では、名簿・明細・送信を分けた仕組みで、明細を配るところまで自動にしています。まずはフォームでの収集と集計を1〜2か月回し、報告が安定してから配るところの自動化に進む順番が安全です。
A. 減らせますが、今回の範囲の外です。入れ直しをなくすには、基幹システム側の受け入れ口に合わせた別の仕組みと費用が必要になります。まずは稼働報告の集計を安定させ、そのうえで入れ直しに毎月何分かかっているかを数えてから考えると、順番を間違えません。どの工程から手を付けるかの切り分けは、ジッソウLABのゲンバAIへ無料でご相談いただけます。
- 派遣スタッフの稼働報告は、LINE公式アカウントでGoogleフォームのURLを配信し、フォームの回答をスプレッドシートで集計する形にすると、月末の転記作業そのものが不要になる。
- Googleフォームをスプレッドシートにリンクすると、回答が送信されるたびに新しい行が自動で追加され、1行目に質問項目、A列に回答日時のタイムスタンプが記録される。
- 集計はフォームの回答シートを直接いじらず、別の集計シートから数式やピボットテーブルで参照すると、運用中のトラブルを減らせる。
- Googleフォームとスプレッドシートは無料で作成でき、給与計算や請求書発行まで自動化したい段階になってから、人材派遣管理システムの導入を検討する順番が現実的。集計のあとに明細を一人ずつ配る工程は、名簿と明細と送信を分けて作れば自作でも回せる。
- Excelのマクロで勤怠集計を組んでいる場合は、そのままスプレッドシートへ移すと書き直しが必要になる(関数と手入力だけの現場には関係ない)。
スタッフ10名を対象に、報告項目を5つ以内に絞ったGoogleフォームを1枚作り、締め日の3日前にLINEでURLを配信する。
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